【日経平均】NHKのニュースで後場盛り上がり111円高

2013年11月06日 18:09

 NYダウは20ドル安。欧州委員会が5日発表した経済見通しで来年のユーロ圏成長率を1.1%と予想して前回の1.2%から下方修正し、ECB理事会を前にユーロもヨーロッパ株も下落。NYも安く始まるが、ISM非製造業景況指数が市場予測を上回って徐々に下げ幅を圧縮し、午後にはプラスにもタッチ。しかし四半期GDPや雇用統計の発表前の様子見もあり、そこまで。6日朝方の為替レートはドル円は98円台半ば、ユーロ円は132円台後半で、ユーロ安が進んでいた。

 日経平均は70.03円安の14155.34円で始まる。序盤は14190~14200円近辺まで下げ幅を圧縮してTOPIXはプラスに浮上。午前9時40分すぎには日経平均もプラスにタッチした。プラスとマイナスを行ったり来たりした後は少しマイナスに沈みそのまま前引け。ところが、後場はいきなりプラスで始まり14407円まで一気に100円超の急騰。火をつけたのがNHKの正午のニュースで、大引け後に予定され誰もが気にする決算のハイライト、トヨタ<7203>の通期営業利益上方修正の業績観測報道をやった。午後2時には日経も後追い速報。もっとも、為替のドル円も30銭ほど円安に振れ先物主導で動いた面もあり、5日のNY市長選とバージニア州知事選で民主党候補当選という開票速報が入り、債務問題再燃懸念が後退してドル高、日本株上昇をもたらしたという見方もあった。

 その後は14300円台半ば、前日比3ケタ高の水準で安定的に推移するが、大引け前に下落して14300円を割りかけ、やはりSQ週の水曜日は荒れるのかと思いきや、終了直前に約20円上昇し終値は111.94円高の14337.31円と3ケタ高で続伸。日中値幅は277円もあった。TOPIXは+9.58の1192.16。売買高は25億株、売買代金は1兆9044億円で、再び2兆円を割り込んでいる。

 値上がり銘柄1256は値下がり銘柄402の3倍以上あり、業種別騰落率は33業種中31業種が上昇。プラス上位は鉄鋼、その他製造、精密機器、海運、非鉄金属、パルプ・紙など。プラス下位は食料品、建設、水産・農林、小売などだった。マイナスは情報・通信、不動産の2業種だけだった。

 日経平均225種中188銘柄が上昇。プラス寄与度1位はKDDI<9433>で+11円、2位はファナック<6954>で+9円、3位は日東電工<6988>で+7円。マイナス寄与度1位はソフトバンク<9983>で-18円。2位は10月の国内ユニクロ既存店売上高が12.8%と悪かったファーストリテイリング<9983>で-9円。その終値は250円安だった。

 メガバンクは全て上昇し野村HD<8604>も7円高。後場の話題の中心のトヨタは売買代金2位、30円高で取引終了。大引け後の決算発表は通期の営業利益見通しが2兆2000億円でNHKも日経も当たりだったが、市場予測よりも低いのが気がかり。前日、日産<7201>・ルノー連合と三菱自動車<7211>が電気自動車(EV)で提携し、小型セダンを年900万台生産すると発表。1日の「ゴーン氏の重大発表」をめぐって噂が飛び交ったのもこれだが、注目の資本提携までは踏み込んでいない。日産は売買代金4位で24円高と反発し、三菱自動車は後場に優先株を買い取って再建に区切りをつける2100億円の公募増資を発表したが7円高と上昇した。

 決算がらみで明暗が分かれたのが自動車部品メーカー。日産車体<7222>は日産の不振を反映し9月中間期が77%の経常減益で26円安。トピー工業<7231>は後場に決算を発表し、9月中間期は上方修正でも通期は下方修正で14円安で値下がり率3位。一方、曙ブレーキ工業<7238>は38円高で値上がり率14位、KYB<7242>は通期の業績予想を上方修正して43円高で値上がり率15位に入った。大まかに言えば日産系が安く、トヨタ系が高くなっていた。

 シャープ<6753>は10円高と反発。前日良かったセイコーエプソン<6724>、ミネベア<6479>は続伸し、ともに年初来高値を更新した。前日、好決算を発表して101円上昇したイビデン<4062>は102円安で値下がり率7位。その理由は決算説明会で次期についてネガティブな話をしたためで、前日の上昇分を打ち消して株価は1円余計に下げた。口から先の世間は世知辛い。

 大日本スクリーン製造<7735>は9月中間期の純利益は液晶パネル向けが好調で15億円の黒字だったが、野村證券が目標株価を引き下げて24円安。日本製鋼所<5631>は25円安で値下がり率13位。9月中間期は減収減益で、営業利益は70.9%減。原発関連の需要低迷はいつまで続くのか。ブラザー工業<6448>は、為替予約が仇になり為替差損で円安効果が打ち消され通期の純利益見通しが3期連続減少。104円安で値下がり率1位になり、値下がり率が10%を超え、前日は日産やシャープが適用を受けた新カラ売り規制のトリガーが発動した。トリガー発動後、翌営業日の大引け時点まで規制は続く。

 淺沼組<1852>は36円高で年初来高値を更新し値上がり率1位、売買高1位、売買代金3位と売買が急増した。前日、9月中間期の連結業績予想を上方修正したのが好感された。手持ち工事の採算が好転して売上総利益が増えている。サカイ引越センター<9039>は155円高で年初来高値を更新した。

 ガンホー<3765>は2000円安で6日続落し盛者必衰、諸行無常の下げっぷり。この日は楽天<4755>は2円高で続伸したが、コロプラ<3668>もモブキャスト<3664>もサイバーエージェント<4751>もタカラバイオ<4974>もペプチドリーム<4587>も下落し、東証マザーズ指数は1.9%下落。新興市場はこの日、NHKのトヨタの業績報道にあおられた東証1部に完敗した。

 この日の注目は「業態シフト」のニュースが出た銘柄。ワタミ<7522>は客離れが止まらない居酒屋から、洋風料理、焼鳥、中華にシフトすると報じられた。業態転換を進めて居酒屋業態は6割強に減るという。しかしシフト先にもハイデイ日高<7611>のような強力なライバルがいる。ソニー<6758>は新ゲーム機「PS4」で課金型ゲームに参入すると報じられた。月500~1000円の課金で継続的にサービス収入を得るモデルを事業の柱に育成するという。これはソーシャルゲーム第1世代全盛期に任天堂<7974>がかたくなに拒否したモデルで、その第1世代のグリー<3632>は希望退職募集に全社員の11.6%の205人が応募して人件費を10億円削減というニュースが伝えられ7円高だった。ワタミの株価は2円高だが前場は年初来安値まで下げる場面もあり、ソニーは20円高だが朝はマイナスで始まっていた。市場の評価では、両社とも「華麗なる転身」とはいかないとみられているようだ。(編集担当:寺尾淳)