【日経平均】ドル円102円台、277円高で15700円台乗せ

2013年11月28日 20:42

 NYダウは24ドル高で感謝祭前に5日連続史上最高値更新。新規失業保険申請件数は1万件減少。シカゴISM景況感指数、ミシガン大学消費者景況感指数改定値は市場予測を上回り、好決算のHPは9.1%の大幅上昇でIT株やクリスマス商戦直前の小売株が高い。それでも高値警戒感でマイナスの時間帯があった。ドル円は、日銀の白井さゆり審議委員の「日銀のシナリオが崩れる可能性が高まれば躊躇なく追加緩和すべき」という発言に反応して102円台に乗せ、28日朝方の為替レートはドル円102円台前半、ユーロ円138円台後半で、円安が進行していた。

 取引開始前に発表された10月の小売業販売額は2.3%増で3ヵ月連続プラス。しかし既存店売上高は百貨店、スーパーは0.4%減、出店ラッシュのコンビニは0.9%減で決して喜べない。前々週はサプライズだった対外対内証券投資の株式分は前週7075億円の入超で依然高水準。日経平均は172.56円高の15622.19円と大幅反発スタートし、直後に5月22日の終値ベース年初来高値15627円を越える。前場は15600円台前半の小動きが前引けまでずっと続く「なぎ」の状態。後場は少し高く始まり15665円の高値を取るが、その後は前場同様に15600円台前半の「水平飛行」を続ける。それでも午後2時台には先物の買いが入って気流が変化し断続的に小刻みな上昇を繰り返した後、浮上の勢いを強めて2時47分に15700円にタッチ。大引け前には15700円台にしっかり乗せ、277.49円高の15727.12円で終値ベース年初来高値更新。しかし5月23日のザラ場ベース年初来高値15942円まではまだ200円以上ある。TOPIXは+13.96の1261.04で高値引け。TOPIXのザラ場ベースの年初来高値1289.77まではあと28.73。売買高は22億株、売買代金は1兆9675億円で2兆円には届かなかった。

 値上がり銘柄は998、値下がり銘柄は意外に多く東証1部全体の35%の625。値上がりセクターは31業種で、上位は海運、パルプ・紙、その他金融、精密機器、鉄鋼、機械など。下位は陸運、その他製品、水産・農林、繊維など。値下がりセクターは鉱業と石油・石炭の2業種だった。

 日経平均採用225種は191対25のプラス優位で、先物主導、値がさ株中心の上昇を裏付ける。プラス寄与度上位は「御三家」にKDDI<9433>を加えた「四天王」が占め、合計で日経平均を101円押し上げた。マイナス寄与度トップは日東電工<6988>だった。

 ドル円102円の円安で輸出関連の製造業に勢いがある日で、前週まで金融緩和期待でにぎわった金融関連は静かに。メガバンクはみずほ<8411>1円高、三菱UFJ<8306>5円高、三井住友FG<8316>値動きなし。野村HD<8604>は9円高だった。自動車、電機は軒並み上昇で、トヨタ<7203>は70円高で3日ぶりに上昇。ホンダ<7267>は65円高、富士重工<7270>は95円高、三菱自動車<7211>は16円高、マツダ<7261>は10円高で年初来高値を更新した。スズキ<7269>は、タイの工場でアジア標準モデルの小型車の生産能力倍増というニュースがあり59円高で4日続伸。その隣のカンボジアに進出する自動車部品のデンソー<6902>は120円高で年初来高値を更新した。

 ソニー<6758>は4円の逆行安だったが、シャープ<6753>は7円高でこの日も売買高1位。33円高のパナソニック<6752>は、31円高のコニカミノルタ<4902>、195円高のオムロン<6645>、63円高の横河電機<6841>とともに年初来高値を更新。電子部品メーカーが非常に好調で、日本電産<6594>は330 円高、村田製作所<6981>は20 円高、TDK<6762>は75円高、ミツミ電機<6767>は8 円高で、いずれも年初来高値を更新している。キヤノン<7751>は続伸して45円高だったが、コマツ<6301>は朝からふるわず10円安だった。

 1000億円を投資して福島県新地町の相馬港にLNG基地を建設してカナダ産シェールガスを受け入れ、ガス火力発電所の建設も検討と報じられた石油資源開発<1662>は35円高。宮城県名取市との間のパイプラインも敷設し被災地には明るいニュース。その南にある福島第一原発の廃炉費用に税軽減措置という報道があり東京電力<9501>は4円高。さらに南になる日立市の地元の従業員2000人を三菱重工<7011>と統合する火力発電事業の新会社に転籍させると報じられた日立<6501>は、33円高の大幅上昇だった。

 8~10月期の営業利益が前期比1割以上増という業績観測報道でSUMCO<3436>は51円高。三菱マテリアル<5711>は10~12月期にアメリカの半導体企業ヘムロック・セミコンダクターの全株式を売却して特別利益215億円を計上と発表し9円高。三井物産<8031>はアメリカのヘルスケア企業と共同で総額470億円規模の新薬開発ファンドを立ち上げ、製薬会社の臨床試験や販売活動を資金支援すると報じられ15円高。住友化学<4005>は千葉工場で生産する樹脂・ゴム原料のスチレンモノマーから撤退という報道があり、収益改善期待で7円高だった。

 関西電力<9503>と委託契約を締結したと発表したエナリス<6079>は95円高。後発医薬品の日医工<4541>は新株予約権活用増資(ライツイシュー)で128億円を調達すると発表。増資に伴う希薄化が軽減される特徴がある手法だが、そこまで理解されず233円安で値下がり率1位になった。

 この日の主役は日経新聞朝刊1面に「2兆円特需」と載った「LNG船」。日本郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運大手3社で2020年までに90隻を発注しその総額は約2兆円になるという内容で、北米から日本へのシェールガス輸送で特需が出るという。記事によると30隻増やす日本郵船は売買高15位で9円高、40隻増やす商船三井は売買高16位で18円高、20隻増やす川崎汽船は売買高11位で4円高と商いを伴って上昇し、海運セクターは騰落率1位だった。このニュースは中国、韓国勢の後塵を拝している日本の造船業界にも朗報で、LNG船を建造する三菱重工は後場上げ足を速め27円高で売買高8位、川崎重工<7012>は3円高。IHI<7013>も11円高と買われた。

 LNG船と縁が薄くても低位株が多い海運、造船関連は買われ、値上がり率ランキングではNSユナイテッド海運<9110>が4位、佐世保重工<7007>が2位に入っていた。佐世保重工は売買高でも12位。造船部門を分離して機械セクターに移った日立造船<7004>まで名前で買われて19円高。相場全体が好調だと、こんな「ワルノリ気味の連想買い」が出てくるのもまたご愛嬌。(編集担当:寺尾淳)