NYダウは66ドル安と続落。小売売上高が市場予測を上回り一時16000ドルにタッチするなど小幅高でもみあっていたが、セントルイス連銀のブラード総裁が12月の量的緩和縮小の可能性に言及し、午後公開された10月のFOMC議事録にも「数回以内の会合で量的緩和縮小決定」と解釈できる委員の発言が記録されていたため下落した。21日朝方の為替レートはドル円が100円台前半、ユーロ円が134円台後半で、ECBがマイナス0.1%の預金金利検討という報道でユーロが安くなった。FOMC議事録でも超過準備に対するFRBの付利金利の引き下げが議論され、日本でも1年前に当時の安倍自民党総裁が、貸出を促すために日銀当座預金の超過準備分にマイナス金利適用を提言したことがある。
取引時間前に財務省が発表した前週分の対外対内証券売買契約は、株式が1兆2949億円という4月第2週以来史上2番目の巨額流入超で、前週、海外資金がリスクオンして日経平均を1079円上昇させたことを改めて確認。直前にドル円が100円を超えて日経平均は100.57円高の15176.65円と反発スタートした。当初15170~15200円の値幅で小動きが続くが、9時30分すぎに一気に15300円突破。ドル円が円安方向に15銭以上動いただけが理由ではなさそうだ。10時台にも一段高で、10時45分に中国のHSBC製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表され前回の50.9も市場予測の50.8も下回る50.4と悪化し中国市場が下落しても、おおむね15300円台を堅持して前引けを迎えた。
昼休みに日銀の金融政策決定会合の結果が発表され、現状の政策を維持。日銀当座預金の超過準備分への「付利の撤廃」もなく、消費増税後の景気刺激の「切り札」として温存か。後場は14300円を割り込んで始まり、その後は15300円にタッチしては押し返される小動きで、3時30分からの黒田日銀総裁の記者会見待ちムード。1時45分頃から15300円台に乗せて15310円にもタッチ。2時発表のスーパー売上高は0.5%の増加で3ヵ月連続で前年同月を上回り、日経平均は15300円台前半で小動きを続ける。終盤に15350円を超えて終値は289.52円高の15365.60円で4日ぶりに反発。TOPIXは+12.88の1246.31で日経平均ほどは伸びていない。売買高は25億株、売買代金は2兆3466億円で2兆円の大台を回復した。
値上がり銘柄は1198で値下がり銘柄419のほぼ3倍。上昇セクター上位は情報・通信、機械、保険、精密機器、繊維、電気機器など。下落セクターは空運、不動産、電気・ガスの3業種で、上昇セクター下位は金属製品、石油・石炭、非鉄金属などだった。
日経平均採用225種は値上がり193銘柄に対し値下がり25銘柄。プラス寄与度1~4位は「御三家」の間の2位に380円高で年初来高値を更新し値上がり率6位のKDDI<9433>が食い込み合計+120円。この日は定期株主総会のファーストリテイリング<9983>は1300円高。ソフトバンク<9984>は売買代金1位と買いが集中し240円高で約1ヵ月ぶりに年初来高値更新。マイナス寄与度1位は住友不動産<8830>、2位はアステラス製薬<4503>で合計-3円だった。
メガバンクにマイナスはなくみずほ<8411>は値動きなし、三菱UFJ<8306>は8円高、三井住友FG<8316>は70円高。自動車は燃料電池車を公開したホンダ<7267>は後場大幅高で140円高だったが、日経新聞朝刊1面に「中国の現地大手2社とハイブリッド車を共同開発」という記事が出たトヨタ<7203>は10円安。提携の相手は第一汽車集団と広州汽車集団で、今まで日本で行っていたハイブリッド車用基幹部品の開発も中国で行う。折しも米倉弘昌経団連会長をはじめ財界ミッションが中国訪問中。東京モーターショーに自社ブランドの四輪試作車を出展しているヤマハ発動機<7272>は前日、柳弘之社長が「2020年までに四輪市場参入」と正式に表明し12円高だった。
コンパクトデジカメの機種を半減させると報じられたパナソニック<6752>は24円高、大幅高の反動も出て売買高2位でも2円安のシャープ<6753>は前日、「鴻海との提携解消」という一部報道があったが会社側は否定。もっとも、改めて中国事業の全面見直しが報じられ、それは台湾の鴻海と協力して進める事業も無関係ではない。
持株会社化構想について金融機関と協議中で2兆円の融資打診と伝えられた東京電力<9501>は9円安。今期の電力事業の営業利益見通しがともに過去最高と伝えられた東京ガス<9531>は1円高、大阪ガス<9532>は6円高。都市ガスの会社はエンドユーザーへのネットワークを持っているので、改正電気事業法のもとで2016年に自由化される電力小売事業に参入できるが、逆にガス小売事業の自由化の論議も起きている。
中国の製造業PMIが悪化してもコマツ<6301>は24円高、日立建機<6305>は15円高、前週から好調なダイキン<6367>はメリルリンチ証券の投資判断引き上げもあり260円高で上場来高値更新と問題にせず。低位株のチタン工業<4098>が値上がり率1位、わかもと製薬<4512>が同2位だった。
この日、全面高に逆行安していたのが不動産で、業種別騰落率はマイナス。三井不動産<8801>は35円安、三菱地所<8802>はJPモルガン証券と三菱UFJモルガンスタンレー証券が投資判断を引き下げて15円安、住友不動産は50円安。6円安の大林組<1802>、1円安の鹿島<1812>など建設大手も軟調で、値下がり率ランキングに鉄建<1815>9位、熊谷組<1861>12位、安藤間<1719>20位など低位建設株が顔を揃えた。
前日、マザーズに新規上場したM&Aキャピタルパートナーズ<6080>は公開価格3000円を7000円上回る10000円、メディアドゥ<3678>は公開価格3300円を8470円上回る11770円の初値がつき、初値が公開価格を上回る連勝記録は39連勝に伸びた。
この日の主役は証券セクター。野村HD<8604>は13円高、大和証券G<8601>は19円高、セクターは異なるがJPX<8697>は147円高で値上がり率10位。前日夕方、国内債が資産の6割を占める年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用改革について有識者会議の最終報告書が発表され、株式については新指数「JPX日経インデックス400」も利用しながら成長株への選別投資を進めて運用比率を拡大すべきだという提言が盛り込まれ、株式市場には追い風。野村HDについては機関投資家の資金を集めて企業買収を支援する新会社を設立すると報じられた。企業再生・事業再生コンサルティングでM&Aに関わる野村総合研究所(NRI)<4307>も70円高。野村證券が主幹事を務め公開価格の3.3倍の初値がついたM&Aキャピタルの人気を横目に、「M&Aの仲介で実績があるノムラもお忘れなく」というところか。
(編集担当:寺尾淳)