【日経平均】日銀短観ショックもありリスクオフ250円安

2013年12月16日 20:26

 前週末13日のNYダウは15ドル高。2年間の予算枠の合意事項を下院が可決し年頭からの連邦政府機関閉鎖が回避されたのは好感されても、FOMCへの警戒感は根強くマイナスに沈む時間帯もあった。グーグルがサーバー用CPUを独自開発する計画が報道されインテルが下落。スプリントが同業の携帯キャリアTモバイルUSの買収を検討というニュースはソフトバンク<9984>の株価にどう影響するか。16日朝方の為替レートはドル円103円台前半、ユーロ円141円台後半で、前週末と比べてやや円高に振れていた。

 取引時間前発表の12月調査分の日銀短観は、大企業製造業の業況判断DIは+16で前回の+12も市場予測中央値の+15も上回り4四半期連続上昇だが、2013年度の設備投資計画は大企業全産業で前年度比4.6%増で、9月調査の5.1%増、市場予測中央値の5.3%増を下回った。3ヵ月先の先行き判断も+14で2四半期連続悪化。政府が2014年の実質経済成長率を1.3%に上方修正しても「消費増税後は景気後退」という見方が企業の新規投資を抑えていることが浮き彫りになった。

 メジャーSQを通過した日経平均は5.24円高の15408.35円で始まるが、TOPIXはマイナスで始まり日経平均もすぐマイナス圏に下落し15400円割れ。午前9時22分には瞬間15300円も割り込んで日銀短観のネガティブインパクトは深刻。現状が6年ぶりの高水準でも「駆け込み需要の追い風参考記録」視されていた。その後は15300~15330円のレンジの小動きが続くが、10時15分すぎからドル円の円高進行に伴って15300円を再び割り込む。10時45分発表の中国のHSBC製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.5で11月50.8も市場予測の50.9も下回り、15200円台後半の低迷なお続く。それでも11時台には15300円台に戻し、前引けは15303円で13日のSQ値にジャストミートした。

 後場は上海市場の下落、ドル円が103円を割り込む円高進行でさらにリスクオフして一段安で始まり、午後0時台に15200円を割り込んで15146円まで下げるが、その後は15200円台前半で小動きが続く。2時30分を回ると先物主導で再び下落して15200円を割り込み、終値は250.20円安の15152.91円と「寄り高」で大幅反落。日中値幅は262円もあった。TOPIXは-15.93の1222.95で4日続落。売買高は22億株、売買代金は1兆9545億円で、FOMC待ちで2兆円を割り込んだ。

 値上がり銘柄180に対し値下がり銘柄は1527で東証1部全体の86%を占める全面安。33業種別騰落率も全業種マイナスで、下落幅が小さい業種は電気・ガス、空運、鉱業、銀行、電気機器、石油・石炭など。大きい業種はその他金融、輸送用機器、繊維、金属製品、機械、海運などだった。

 日経平均採用225種でマイナスは212銘柄もあり、プラスはわずか11銘柄。プラス寄与度1位はファナック<6954>で+4円。2位のNTT<9732>以下は+0円台だった。マイナス寄与度の1、2位はソフトバンク<9983>とファーストリテイリング<9983>で、合わせて日経平均を60円押し下げた。ソフトバンクは「スプリントがTモバイルUSの買収準備」というウォールストリートジャーナルの報道はそれほど材料にならず280円安だった。

 メガバンクも証券も総崩れの中で信託銀行の三井住友トラスト<8309>は2円高。円高進行で自動車関連は後場下げ幅を拡大し、トヨタ<7203>120円安、ホンダ<7267>115円安、富士重工<7270>70円安、マツダ<7261>15円安、日産<7201>18円安に。電機も日立<6501>3円安、東芝<6502>1円安、シャープ<6753>7円安、パナソニック<6752>18円安、ソニー<6758>19円安と全面安。しかし電子部品関連はスマホにコネクターを供給するヒロセ電機<6806>はシティグループが投資判断を引き上げて360円高で年初来高値を更新し、大日本スクリーン製造<7735>は野村證券が目標株価を引き上げて11円高だった。

 コマツ<6301>は中国PMIが下落し上海市場が悪かっただけでなくインドネシアでの販売不振も伝えられ18円安で4月4日以来の年初来安値更新。NTTは子会社がフランスのITサービス会社を買収と報じられ売買代金3位で170円高と逆行高し値上がり率14位。中国電力<9504>はSMBC日興証券が投資判断を引き上げて17円高。中部電力<9502>も6円高。JT<2914>は11月の国内紙巻きたばこ販売が前年同月比1.1%減で90円安。化学のクレハ<4023>はクレディスイスが目標株価を引き上げて22円高で値上がり率9位に入った。

 年末年始の予約状況が国内線14.3%増と好調でもANAHD<9202 >は1円安、14.1%増のJAL<9201>は10円安。9連休の人もいて海外旅行に期待できるが、ANAHDは10.2%増でJALは前年並み。海外に行きにくく燃料費高騰が収益を圧迫する円安が恨めしいところ。その海外旅行のエイチ・アイ・エス<9603>はゴールドマンサックスが「買い」で据え置いたこともあって反発し、260円高で値上がり率8位に入った。

 値上がり率1位の東京産業<8070>は機械商社だが、放射性セシウムの分離技術を開発という報道で買われストップ高の80円高で年初来高値更新。一方、値下がり率1位のサイボウズ<4776>は、朝方に年初来高値をつけた後に急落し後場一段安で6150円安。同2位のエイチーム<3662>も同様に朝方の年初来高値の後に急落し後場ストップ安の850円安で特攻野郎も小休止。同8位のドワンゴ<3715>は206円安。取引開始早々に気配値ではなく売買値がつき「普通の株」に戻ったミクシィ<2121>は前場プラスの局面もあったが結局680円安だった。前週は年初来高値を更新したユニデン<6815>は27円安で値下がり率12位。ネット通販強化でコストがかさみ6~11月期の純利益が70%減のアスクル<2678>はドイツ証券が目標株価を引き下げて220円安で値下がり率14位。中期経営計画を下方修正した昭和電工<4004>は売買高6位に入り8円安だった。

 この日の主役は東京電力<9501>。政府が原発事故の賠償と除染に必要な資金の貸付枠を現在の5兆円から2倍の10兆円に引き上げるという報道で朝方は買いが盛り上がって27円高まで上がり売買高、売買代金とも5位に入ったが、終値は5円高。政府融資は無利子・無期限という「利息を取らず、ある時払いの催促なし」という破格の条件だが、財源は交付国債で国の借金。その償還財源として国の原子力損害賠償支援機構が東電株を市場に放出する話が出ているが、だいぶ先の需給悪化懸念よりも直近の国費投入額倍増のほうが好材料視されていた。(編集担当:寺尾淳)