【日経平均】前週末とのマドを埋めて173円安で3日続落

2013年12月12日 20:21

 11日のNYダウは129ドル安。連邦議会で与野党の財政協議が大筋で合意したことは、17~18日のFOMCで量的緩和縮小に踏み切る環境を整えたという意味でバッドニュースになり株価を押し下げた。1月に連邦政府機関閉鎖に再突入すればもっとバッドニュースだが、12日に2年間の予算枠の合意事項を下院が可決すればその可能性はほぼなくなる。12日朝方の為替レートはドル円は102円台半ば、ユーロ円は141円台前半。NY時間にドル円が102円台を割り込みそうになりドルは弱含みだった。

 日経平均は137.74円安の15377.32円と大幅安で始まる。午前9時31分に15324円まで下げ、前週末6日の高値15327円と、アメリカの雇用統計を好感して上昇した9日の安値15547円の間のマド埋め完了。直近のマドを埋めても容赦されず10時台には15300円を割り込む。下げ幅を少し縮めても11時台になるとまた下落し、前引けは15265円でほぼマイナス250円の全面安になった。

 後場は前引けと同水準の15200円台の後半で静かな値動きが続く。メジャーSQ前日の午後はジタバタせず息を殺して様子見か。午後2時台になると15300円台に乗せて下げ幅を若干圧縮しながらも小動きのままに大引け。終値は173.24円安の15341.82円で3日続落した。日中値幅は137円。TOPIXは-8.22の1242.23で日経平均より下落幅が小さくNT倍率は12.35倍に圧縮。売買高は21億株、売買代金は2兆914億円だった。

 値上がり銘柄434に対し値下がり銘柄は1154で65.2%を占めた。業種別騰落率の上昇セクターは不動産、パルプ・紙、ゴム製品、情報・通信の4業種。下落セクター29業種で下落幅が小さいのは水産・農林、石油・石炭など。大きいのは化学工業、その他金融、精密機器、医薬品、陸運、証券などだった。

 日経平均採用225種の値上がりは44銘柄、値下がりは169銘柄。プラス寄与度1位はKDDI<9433>で+4円、2位は三井不動産<8801>で+1円。マイナス寄与度1位は日東電工<6988>で-38円。その下げっぷりは「御三家」が束になっても-35円でかなわず、御三家の上をゆく「将軍家」だった。

 メガバンクはみずほ<8411>1円安、三菱UFJ<8306>3円安でも三井住友FG<8316>は20円高。野村HD<8604>は5円安。中国で低価格ハイブリッド車を合弁先と開発・生産し2016年に発売すると報じられてもホンダ<7267>は50円安、トヨタ<7203>は50円安でともに続落。富士重工<7270>も16円安と反落したが、マツダ<7261>は4円高と買われた。電機は日立<6501>が4円高以外は不振だったが、バークレイズが目標株価を引き上げたNTT<9432>が続伸し170円高で売買代金3位に入り、NTTドコモ<9437>6円高、KDDI60円高で、ソフトバンク<9984>の100円安を除けば通信関連は堅調だった。

 清水建設<1803>は工事採算が改善し来期は利益130億円押し上げという業績観測記事が出て2円高。熊谷組<1861>は売買高1位に入り3円高と続伸した。全面安の中で逆行高したのが不動産で、後場発表の東京都心部オフィス空室率の改善で上昇幅をひろげ業種別騰落率トップに。三井不動産は35円高、三菱地所<8802>は15円高、住友不動産<8830>は15円高、東急不動産HD<3289>は10円高、東京建物<8804>は15円高。サンフロンティア不動産<8934>は78円高で値上がり率12位に入った。住設機器のTOTO<5332>は15円高で年初来高値を更新。住宅事業の顧客開拓に本腰を入れ不動産2000社と連携するヤマダ電機<9831>は12円高で、ヤマダ・エスバイエルホーム<1919>は1円高だった。セブン&アイHD<3382>はシティGが新規に「買い」のレーティングをつけて15円高になっていた。

 法人向けネットサービスを手がけるマザーズのフリービット<3843>は、5~10月中間期の営業利益が68.1%増、最終損益が黒字転化して215円高。ネット調査会社首位のマクロミル<3730>は、アメリカのベインキャピタル系の投資ファンドBCJ-12が500億円でTOBをかけて完全子会社化すると報じられ、ストップ高比例配分の100円高で値上がり率3位。終値は763円だがTOB価格は786円なのでさらに上値を追えそうだ。

 セガサミーHD<6460>は、セガが任天堂<7974>「3DS」向けにアイテム課金のゲームを提供と報じられ41円高。任天堂は20円安。ユニデン<6815>は30円高で値上がり率7位、売買高5位、売買代金15位。Klab<3656>は22円高と続伸したが、「旧勢力」のDeNA<2432>は189円安、グリー<3632>は71円安で値下がり率3位と4位に並んだ。エイチーム<3662>は4日連続ストップ高で1405円高で値上がり率1位と絶好調。ゲーム・コンテンツ関連には、この日1800円高だったガンホー<3765>、2日連続でストップ安比例配分1500円安を喫したミクシィ<2121>に続く〃伝説〃を生み出しそうな候補がまだまだ控えている。

 この日の主役は、後場は一時ストップ安になり日経平均の足を引っ張った悪役、日東電工。前日に今期の業績見通しを修正したが、最終利益は増益見通しから一転して6%減益で、売買代金2位の売り浴びせの嵐で990円安になり、年初来安値を更新して値下がり率1位。この銘柄の取り柄はスマホやタブレット端末に使われるタッチパネル液晶用フィルム市場の拡大だが、世界的に見ると液晶パネルは中国での過剰生産で値崩れし「利益なき繁忙」に陥り採算が悪化している。液晶パネル用フィルムを製造する富士フイルムHD<4601>は82円安、クラレ<3405>は47円安で値下がり率17位、住友化学<4005>は20円安で値下がり率8位。液晶パネル用ガラスの日本電気硝子<5214>は16円安、タッチパネルの日本写真印刷<7915>は66円安で値下がり率13位と影響が波及した。

 日東電工は業績下方修正の〃常習犯〃で今期はこれで10月に続き3回目。〃前科〃も数多く、その〃天罰〃なのか9月26日に日経平均に新規採用された後はロクなことがなく、終値はこの日まで37.7%下落。「もしあの時、新規採用が任天堂だったら……」と日経新聞社や日東電工をプッシュした野村證券への恨み言が出そうだが、任天堂はその間に10.6%上昇している。もし任天堂を採用していたら除数は若干違ってくるが、試しに現在の除数25.480を使って両銘柄を入れ替えて計算してみると、この日の日経平均終値は15676円で334円も多くなった。(編集担当:寺尾淳)