日本製品の「ガラパゴス化」といえば、ワンセグ機能や電子マネー、お財布携帯機能など日本国内独自の進化を遂げ「ガラケー」と揶揄されるフィーチャーフォンを思い浮かべる人は多いと思うが、実は日本のガラパゴス化は携帯電話だけに留まらず、ゲーム業界にも波及している。
今や、家庭用テレビゲームは世界的に親しまれるようになったが、そもそもこの巨大市場の火付け役となったのは、1983年に発売された任天堂<7974>のファミリーコンピュータであることは間違いないだろう。もちろん、それまでにも家庭用ゲーム機は存在していたが、アーケードゲームをそのまま家庭のテレビに持ち込んだようなグラフィックとクオリティは圧倒的で、玩具市場のみならず社会現象となった。以降、後継機であるスーパーファミコン、ソニー<6758>のプレイステーションが大ヒットとなり、日本は一大ゲーム大国にのし上がる。
それから30年。日本はいつの間にやら世界のゲーム市場の流れから逸脱してしまった。そのもっとも顕著で屈辱的な例は、昨年11月に欧米で発売されたソニーの「プレイステーション4(PS4)」と、米マイクロソフトの「XboxONE」が、日本での発売を見送られたことだ。PS4の発売は、日本では2月末頃の発売が予定されているものの、年内発売を期待していた日本国内のゲームファンに広がった失望感は大きい。日本での発売を遅らせる理由として、ソニー側は「発売と同時に十分な国内向けソフトを用意するため」と弁明しているものの、確実な売れ行きが期待できる欧米市場への初期供給を確保したいという戦略意図は明らかだ。この一件でソニーやマイクロソフトが日本の市場をすでに重要視していないということが露呈した形となった。
日本の家庭用ゲーム機市場が衰退してしまった原因は、大きく3つ考えられる。
1つはPS3以降に高騰したゲームソフトの開発費だ。画質がハイビジョン対応になったことや視覚表現などの点で大きく向上したため、海外に負けないクオリティの高い作品を作ろうと思えば莫大な制作費がかかってしまう。以前は1億円程度が上限だったが、PS3ソフトでは、その10倍となる10億円クラスのものも珍しくない。そのため、相当の販売を見込めないと回収が難しく、開発に踏み切れなくなってしまった。新規のオリジナル作品で冒険するのはもってのほかで、かつての人気作品の新作中心のラインナップになってしまい、目新しさにもかけてしまう。
2つめは、皮肉なことに、家庭用ゲーム市場を開拓した任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」の大ヒットだ。ニンテンドーDSならば、開発費は5千万円程度。かかっても、せいぜい1億円。リスクは少なく、ニンテンドーDSならば売り上げも期待できるとあって、開発メーカーが殺到した。お陰でニンテンドーDSシリーズは空前のヒット商品となったものの、国内ゲームメーカーの開発力は、海外他社に大きく水をあけられる要因にもなった。
そして3つめは、ここ数年間でのソーシャルゲームの大躍進だ。ニンテンドーDSで携帯ゲーム機に慣れ親しんだ日本人ユーザーの感覚と、DeNA<2432>のモバゲーやGREE<3632>など、ガラパゴス携帯で培ったソーシャルゲームの土壌が、スマートフォントやタブレットという新しいプラットフォームを得たことで、ユーザー層が一気に広がった。矢野経済研究所が13年1月に発表した「ソーシャルゲーム市場に関する調査結果 2012」によると、2012年度は前年度比137パーセントの3,870億円、2013年度予測は同110パーセントの4,256億円と拡大基調となっている。13年のヒット作としては、パズドラの相性で知られる「パズル&ドラゴンズ」や、艦隊戦を萌えキャラで擬人化した「艦隊これくしょん」などがある。これらは基本的に無料で遊べて、課金で収益を上げるタイプのものだが、以前に比べても無料でも充分に遊べるものが多くなっている。
メーカー側の開発費の問題もさることながら、プレイステーション3以降のゲームハードの高額化によって、ライトなゲームユーザーにとっては、近年の家庭用据え置きゲームは敷居の高いものになってしまった。また、時間のかかる据え置きゲームよりも、通勤通学の最中にでもスマートフォンなどで手軽に楽しめるソーシャルゲームに移行してしまうのは当然の流れかもしれない。ガラパゴスと揶揄されても、それが日本人の生活に合ったものならば、仕方がない。ソーシャルゲーム市場の成長は、2014年も続きそうだ。(編集担当:藤原伊織)