拡大する無線LAN市場 オリンピックに向けた日本の課題

2014年02月02日 20:16

無線LAN

家電にも続々と搭載され始めた無線LAN。用途が広がるにつれ、より小型で開発や導入が容易な無線LANモジュールが求められている。

 ITC総研が発表した「2013年度 公衆無線LANサービス利用者動向調査」によると、公衆無線LANサービスの利用者数は毎年400万人前後のペースで伸び続けており、2014年度には2,000万人を突破、2016年度には3,000万人に近づくと予想されている。また、それに伴って、Wi-Fi通信機能が装備されたモバイル情報端末も増加しており、2011年度に出荷台数3,749万台から、2016年度には5,423万台に達するとみられている。さらにスマートフォンユーザーの4人に1人が公衆無線LANサービスを利用しており、無線LAN環境が今や生活に欠かせないものになりつつあることが分かった。

 無線LANといえば少し前まではパソコン周りに限定された技術だったが、ここ数年のスマートフォンやタブレットの普及によって、家電の世界にも無線化が急速に進んでいる。

 例えば、パナソニック<6752>ではスマートフォンから家電の遠隔操作ができる「パナソニックスマートアプリ」を展開しているが、これに対応したエアコンの場合、外出先からの電源のオン・オフをはじめ、別の部屋からの温度調節、さらには電気利用料等の情報を管理、確認できる。また、シャープ<6753>で販売しているロボット家電「COCOROBO」も面白い。基本的にはルンバなどでお馴染みのお掃除ロボだが、無線LAN機能を搭載しており、外出先などから本体を遠隔操作することはもちろん、COCOROBOに赤外線リモコン信号を登録しておけば、無線LANが搭載されていないテレビやエアコン、照明器具や空気清浄機などの家電も、COCOROBOを介することで遠隔操作ができるようになる。しかも、本体に内蔵されているカメラで留守宅の様子を静止画で確認することまで出来るのだ。これがさらに大規模になれば、スマートハウスの実現には不可欠なホーム・エネルギー・マネージメント技術「HEMS」になる。家電業界のみならず、住宅業界でも無線LANは欠かせない技術なのだ。

 そんな中、ローム<6963>が1月23日、アンテナ内蔵の超小型タイプの無線LANモジュールの新製品「BP3595」の発売を開始すると発表した。家電などに搭載される際、無線LANモジュールに求められることは、より小型であることと、開発や導入が容易であることだ。同製品は2.4G帯を用いる国際標準規格「IEEE802.11b/g/n/i」に準拠したアンテナを内蔵した無線モジュールで、同社の従来品と同等機能を維持したまま、約47%の小型化に成功したものとなっている。また、電波法認証も取得済みのため、セットに組み込むだけで、すぐに無線LAN通信を実現できるオールインワンの仕様となっており、開発も容易だ。さらに少数購入が難しいことが常識の業界において、1個から買える点も、開発サイドにとっては有り難い。開発負荷や製造負荷が大幅に軽減されることで、これまで無線LANに注目しながらも導入には躊躇していた業者や、全く新しい分野での活用も期待できるのではないだろうか。ロームは、IC、ソフトウエア、モジュールと日本国内で一貫生産しており、長期安定供給が可能という強みもある。

 無線LAN環境の構築は、日本の今後の経済発展の為にも重要な課題だ。環境庁の発表によると、「外国人が旅行中に困ったこと」についてアンケート調査を行ったところ、「無料の公衆無線LAN環境」が36.7パーセントで「困ったこと」の最多となっている。日本の公衆無線LANは会員限定のものが多く、非会員や外国人が利用するのは難しい。2020年には東京オリンピックの開催も控えており、外国人観光客も利用しやすいフリーの公衆無線LANサービスの構築は急務となっている。

 無線LAN業者同士のシェア争いも苛烈になっているが、目先の利益を追求するあまり、海外諸国に比べてフリーの公衆無線LAN環境が極端に遅れているのが現状だ。ロームなどの技術系企業が頑張っている一方で、世界からモバイル後進国と嘲笑されないようにしたいものだ。(編集担当:藤原伊織)