10日のNYダウは利益確定売りが入ったが7円高。11日のNYダウは192円高で4日続伸。11日にイエレンFRB議長が下院金融サービス委員会で議会証言を行い、前議長から受け継ぐ金融政策を明快に説明し雇用にも言及しながら余計なことは言わなかった。「真の雄弁とは、必要なことは全て話さず、必要なこと以外は一切話さないこと」(ラ・ロシュフコー)で好感度アップ。古今東西、ひと言多いトップが数々の騒動を巻き起こしたが、イエレン氏は大丈夫そうだ。13日には上院でも議会証言を行う。その連邦議会ではベイナー下院議長が債務上限引き上げを無条件で容認する方針を示し、マーケットは「達成感MAX」だったようでNYダウは大幅上昇して終盤16000円台に乗せたが、終値で惜しくも大台を逃した。12日朝方の為替レートはドル円は102円台後半で、ユーロ円は139円後半までユーロ高が進行した。
シカゴCME先物清算値は14885円。取引時間前発表の12月の機械受注が市場予測の4.2%減を大幅に下回る前月比15.7%減というネガティブサプライズだったが、日経平均は103.39円高の14821.73円で、まずはアメリカの株高を織り込んでスタート。しかし10時台までは15800円をたびたび割り込む。14日のマイナーSQが意識され、さらに国内経済指標の悪化が効いたか。それでも1月の中国の貿易統計は輸出が10.6%増と2ケタ増のポジティブサプライズで、豪ドルが上昇したのを受けて午前10時台後半から一段高になり、11時6分には14874円のピークをつける。前引は14856円だった。
後場は午後0時台に14880円に迫った後は上値が重たくジリジリ水準が下がる展開。1時台は上回っていた14800円も2時台には割り込み、TOPIXも1220を下回る。後場に4~12月期決算を発表した大手ゼネコンの大林組<1802>、鹿島<1812>が営業減益で株価を下げ、さらに「日経平均寄与度四天王」が全てマイナスでは2時38分に14769円まで下げるのも納得できる。大引け前に値を戻し、終値は81.72円高の14800.06円でスレスレの14800円台乗せだが今年初の3日続伸。水曜は今年6連勝。日中値幅は105円と小さかった。TOPIXは+15.32の1219.60。売買高は23億株、売買代金は2兆3740億円だった。
値上がり銘柄は1374、値下がり銘柄は319で業種別騰落率は証券だけマイナス。プラス上位はゴム製品、保険、電力・ガス、非鉄金属、海運、金属製品など。プラス下位は建設、不動産、その他金融、情報・通信、倉庫などだった。
日経平均採用225種は値上がり168銘柄、値下がり45銘柄。プラス寄与度1位は東京エレクトロン<8035>で+9円、2位は「フィット」「ヴェセル」などハイブリッド車8万台をリコールしても122円高のホンダ<7267>で+9円。マイナス寄与度1位はファーストリテイリング<9983>で-27円、2位には-6円のKDDI<9433>が入った。
26円高のトヨタ<7203>は豪ドル高と人件費の高騰でオーストラリアでの生産から撤退するニュースがあり、デンソー<6902>など部品大手が追随する動きも報じられた。デンソーは192円の大幅高。ブリヂストン<5108>も152円高と買われた。日産<7201>は日米で新車販売が好調で4~12月期決算の営業利益は10%増で、1月の中国での販売台数が0.4%減でも株価は2%を超える上昇の18円高。だがこの日は車体メーカーの日産車体<7222>のほうが目立ち167円高で値上がり率4位。輸出向けも国内向けも増産中で通期業績見通しの純利益を約2倍に上方修正した。ヤマハ発動機<7272>は後場に12月期本決算を発表し、経常利益は前期比2.2倍の600億円で、今期は28.1%増の770億円の見通し。前期の年間配当を6円増額して、75円高と急伸した。
ソニー<6758>は、画像センサーなどアップルの新型iPhone向け部品を大量供給する交渉に入ったと報じられ63円の大幅高で売買代金4位。そのアップルが「IGZO液晶」を採用する噂やまずシャープ<6753>も2円高だった。噂で買われ、正式発表で売られるか。日立<6501>は12円高、東芝<6502>は6円高。売買高6位のNEC<6701>は6円高で昨年来高値更新、富士通<6702>も17円高で昨年来高値更新、70円高のオービック<4684>も39円高のITHD<3626>も昨年来高値更新で、情報システム関連銘柄への買い意欲は旺盛だった。
自動車、OA機器向け精密ばね大手のアドバネクス<5998>は26円高で値上がり率1位。2位はコカコーライーストジャパン<2580>で、決算を好感され385円高で昨年来高値を更新。3位は信用取引規制が解除され143円高と後場急伸した藤倉ゴム<5121>。ジェネリックの東和薬品<4553>は通期の営業利益を78億円から90億円に上方修正して500円高で値上がり率5位。市場予測を大きく上回り、80円高の沢井製薬<4555>とともに後発医薬品銘柄が健闘した。
サンリオ<8136>は4~12月決算の純利益10%増で、期末配当を「ハローキティ40周年記念配当」で10円増額して375円高で値上がり率11位。DeNA<2432>は新作ゲームが好調で161円高で売買代金3位、値上がり率15位。一方、リソー教育<4714>はストップ安比例配分の80円安で値下がり率1位。生徒が流れるとみられた東京個別指導学院<4745>は22円高で昨年来高値を更新した。クボタ<6326>はUBSが目標株価を引き下げ41円安。ダイキン<6326>は10日に発表した4~12月決算は95.6%増益で上方修正期待が出てゴールドマンサックスは「コンビクションリスト」に入れる高評価だったが、業績観測報道で株価には織り込み済みとみられ「好材料出尽くし」で80円安。ヤマトHD<9064>は野村證券がレーティングを引き下げて59円安だった。
ローソン<2651>は小型スーパー「ローソンマート」を都市部を中心に100店舗出店する計画で120円高。保険セクターでは第一生命<8750>がNKSJHD<8630>の損保ジャパンから低価格保険事業を買収して参入すると報じられ、第一生命は17円高、NKSJHDは88円高だった。
この日の主役は金融。銀行株はみずほ<8411>こそ値動きなしだったが、三菱UFJ<8306>は7円高、三井住友FG<8316>は38円高。もう一つのメガバンクのりそなHD<8308>は6円高で売買高5位、売買代金10位に入った。信託銀行の三井住友トラストHD<8309>も12円高。日銀の木内登英審議委員が日経新聞朝刊のインタビューで「追加緩和は副作用が大きい」と慎重な姿勢を見せたが、議会証言の中で日銀の異次元緩和政策を「デフレ解消には当然」と支持したイエレン議長とは役者が違ったようで、為替も金利もFRBの政策に安心感を持った動き。そんな時は金融株が買いを集める。しかし証券セクターは野村HD<8604>こそ2円高だったが大和証券G<8601>13円安、いちよし<8624>24円安、東海東京証券<8616>15円安などふるわず、この日の唯一のマイナスセクターになっていた。(編集担当:寺尾淳)