「積極的平和主義」も「成長戦略」も同時に実現する「武器輸出規制緩和」

2014年02月28日 20:00

 政府は「武器輸出管理三原則」の見直しを行い、三原則の一つ、輸出禁止国の項目から、「紛争の当時国」を削除した。紛争当事国であっても政府の国家安全保障会議(NSC)が可能と判断すれば輸出できるとしたのである。3月には閣議決定する予定だ。

 「武器輸出管理三原則」は実は民主党野田政権時代に大幅に緩和されている。それが今回さらに緩和されようとしている。野田政権時代の緩和では公明党は民主党を「死の商人」と非難しており、今回も与党内では慎重な構えをみせている。

 この緩和は1月の防衛関連企業でつくる経団連の防衛生産委員会が武器輸出三原則を大幅に緩和すべきだと自民党に示した提言も反映されており、輸出競争力を強化する目論見もある。安倍首相は国会の答弁で「積極的平和主義の観点から新たな安保環境に基づく明確な原則を定める」と語ったが、経団連の提言が反映されていることから、「ビジネス優先」という見方もある。現在の武器輸出禁止政策は、三菱重工(7011)、川崎重工(7012)、IHI(7013)といった防衛産業関連企業の国際的な武器の共同開発への参加を困難にしており、技術面、コスト面での遅れが懸念されている。いずれにしても、紛争の当時国へ輸出すれば、日本が紛争に積極的に関わっていると海外から見られることは避けられない。「輸出を認め得る場合」は、平和貢献・国際協力に資する場合とあるが、紛争国へ輸出する時点で、整合性が問われるかもしれない。

 一方で政府は今月25日、戦車やミサイル、戦闘機、小銃などが市民への攻撃や虐殺などに使われる恐れがある国に取引や仲介を禁じる「武器貿易条約」の承認案を閣議決定した。通常兵器の国際取引を規制する初の世界的なルールで、武器輸出の緩和とは抵触しないとのこと。紛争国への輸出を拡大させながら、同時にそれらの国との取引・仲介を禁じる武器貿易条約と、どう整合性をもたせるのか、今後の政府の動向に注目していきたい。(編集担当:久保田雄城)