大規模災害発生直後から広範な情報収集を可能に スマホからマルチコプターへのWiFi直接通信に成功

2014年03月11日 07:22

 東北大学大学院情報科学研究科の加藤寧教授、西山大樹准教授らの研究グループは、2014年2月、直接通信が不可能な距離にある地上の2地点間を、小型無人航空機を複数台利用して空中に構築した通信ネットワークでつなぐことにより、双方向でメールを送受信することに成功した。実験の成功により、特別な通信設備を必要としない、いつでもどこでも通信可能な次世代通信システムとして期待がもたれている。

 研究グループは、東日本大震災クラスの大規模災害が発生した直後に、広大なエリアに点在する膨大な数の被災者から、迅速かつ効率的に情報収集することを可能にする技術として、一般に普及したスマートフォンと機動性に優れた無人航空機によって構成される全く新しい情報通信ネットワークを構想し、その実現を目指して研究開発に取り組んできた。

 今回、スマートフォンと無人航空機による応急通信ネットワーク構築の実現に必須となる次の3つの項目の実現性の検証を目的とし、小型無人航空機の一種であるマルチコプター(自律飛行可能)飛行させて実験を実施し、実現性を実証することに成功した。

 ネットワーク構築に必須の項目は1.市販のスマートフォンに標準搭載されているWiFi機能を利用し、地上のスマートフォンと上空のマルチコプターの間で直接通信すること(100メートル以上の距離でもメール送受信に成功)2.直接通信することができない距離にあるマルチコプター同士を、その飛行経路等を適切に制御することにより、マルチコプター同士の直接通信を一時的に可能にすること(2台のマルチコプター間で、WiFiによるメール送受信に成功)3.マルチコプターの移動そのものを情報の運搬に利用することで、情報の伝達可能エリアを拡大すること(実験環境下で実施可能な最大距離である約700メートルの運搬に成功)――の3項目。

 上記3つの項目の実証に成功したことは、スマートフォンと無人航空機によって構築されるネットワークが、1.地上には特別な通信設備が不要2.いつでもどことでも通信可能――という耐災害の点で非常に優れた特徴を実現可能であることを意味するという。非常用通信車・バルーン(気球)・通信衛星などの従来型の耐災害通信システムでは対応不可能な要求にも応え得る次世代の通信システムとして大きく期待される。

 無人航空機の産業利用は今後数年の間に爆発的に増加することが予測されるが、複数の無人航空機を利用して空中にデータ通信専用ネットワークを構築する試みは世界でも類がなく、どのようにネットワークを構築すればどの程度の通信性能を実現可能かといったことは未だ明らかにされていない。また、データ通信に利用するための専用の周波数については、国際的にみても本格的な検討が未だ始まっておらず、今後の議論の進展が望まれるところだ。(編集担当:横井楓)