増税に揺れる不動産業界をプラスに転じる、次の一手

2014年04月05日 20:15

 4月1日、消費税率が8パーセントに引き上げられたが、増税分の転嫁問題など、未だに対応に追われている企業や事業主も多いようだ。そんな中、日銀は3月全国企業短期経済観測調査(短観)を4月1日に発表したが、こちらも駆け込み需要とその反動減の格差によって、企業の景況感に暗い影を落とす内容となっている。先行き判断は市場予想を軒並み下回っており、とくに自動車・小売においては、前回の消費増税が行われた1997年の調査を上回る過去最大の悪化幅を記録している。2015年には、さらに10パーセントへの増税も予定されていることから、経済の冷え込みを懸念する声も多い。

 消費税率の引き上げは、とくに高額商品を扱う業界での影響が大きい。自動車産業や不動産、建築関係はその代表格ともいえるものだ。これらの業界では97年の増税時の反省を踏まえて、昨年10月に増税が決定する前から対応や対策を行ってきたものの、それでもやはり、駆け込み需要とその後の反動は避けられず、少なからず影響は出始めている。しかも、不動産業界では消費税の増税のみならず、2015年1月に予定されている相続税の税制改正も大きく影響するとみられており、しばらくの間は混沌とした状況が続きそうだ。

 しかし、これらの状況をマイナスばかりに捉えるのではなく、プラスに転化しようとする動きもある。現在、相続税の改正によって基礎控除が現行のおよそ6割の水準に引き下げられる可能性が濃厚だ。相続税の課税対象範囲が広がることで、とくに目立った財産がなくても、持ち家があるだけで相続税の対象者になりかねない。何の対策も打たなければ、住んでいる家屋を失ってしまうかもしれないのだ。そんな中、この状況を回避する方法の一つとして、賃貸併用住宅や二世帯住宅などに建て替えることによって、課税対象となる土地評価額を8割減額できる「小規模宅地等の特例」が注目されている。

 そこで重要となるのは、限られた敷地をいかに有効活用できるプランを提案できるかだ。とくに都市部においては、敷地面積だけでなく、建物の密集地域であったり、建築制限があったりと、様々な厳しい条件が考えられる。そして、これらに柔軟に対応しつつ、限られた敷地を有効活用するためには、建物を多層化することは避けられない。

 大手ハウスメーカー各社も昨年あたりから、これに対応した商品を続々と市場に投入し始めている。例えば、大和ハウスは昨年4月に同社初となる5階建都市型住宅商品「skye(スカイエ)」の販売を首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)で開始しているし、積水ハウスも自由度の高さや敷地対応力で定評のある賃貸住宅「シャーメゾン」の提案を積極的に行っている。

 さらに、パナホーム株式会社も、この4月16日に工業化住宅としては業界初となる都市型7階建住宅「Vieuno7(ビューノセブン)」を新発売することが話題になっている。この商品は、これまで同社が3~5階建で培った実績とノウハウが生かされているほか、工業化住宅の特長を生かし、工期の短縮や、柱の少ない大空間の設計ができるなど、数々の魅力を備えている。

 消費税率の引き上げは、確かに、売る方にとっても買う方にとっても、大きな負担を強いる事は間違いない。しかしながら、見方を変えればプラスに転じることもできる。不動産業界にとって新たな客層を開拓するビジネスチャンスであるとともに、消費者にとっても、業者がしのぎを削って開発した優秀な商品を手に入れることのできるチャンスとも考えられるのではないだろうか。(編集担当:石井絢子)