いよいよ4月の消費増税が目前に迫ってきた。安倍政権が掲げるアベノミクスが徐々に効果を現し始め、多くの企業で昨年末の賞与が増額されるなど景気の回復基調にある。とはいえ、長年に渡って日本経済を蝕んできたデフレーションは未だ克服には至っておらず、増税の影響で消費が低迷してしまうと、景気がまた逆戻りすることも懸念されている。政府はその対策として、5・5兆円の2013年度補正予算案と、一般会計総額が95・9兆円と過去最大の14年度当初予算案を今月下旬から始まる通常国会に提出する予定だ。また、復興特別法人税の廃止を前倒しで3月末に検討するほか、設備投資減税などの税制改正も行う方針を打ち出している。政府の施策も重要だが、景気の腰折れを防いで日本経済を立ち直らせるためには、官民一体となった対策が必要だ。
消費税率引き上げの影響を最も受けやすいと思われるのが、建設業・不動産業だ。とくに住宅は一般消費者が購入する商品としては最も高額といえる。当然、増税による負担は大きく、消費も鈍る。実際、税率が3パーセントから5パーセントへ引き上げられた1997年は、前年の駆け込み需要の反動で大きく落ち込んだ。
今回は、「すまい給付金制度」や、住宅のためのローンの残高に応じて所得税もしくは住民税が控除される「住宅ローン控除」、また、固定資産税や不動産取得税、さらには登録免許税などが住宅購入時に軽減される優遇税制など、増税後の負担を極力軽減することで、何とか反動を最小限にしようとしているものの、多少の減は避けられないだろう。もちろん、企業側も今回はその対策を用意している。例えば、業界最大手の積水ハウスは環境配慮型住宅や3、4階建てなどの高付加価値の商品を展開する戦略で価格以上の価値観を打ち出しているし、住友林業では、リノベーション事業を強化し、アフターサービスによってサポート体制の拡充を図ることで顧客満足度を高め、増税後の反動減に備えている。
また、大手だけでなく、中小の住宅メーカーも積極的に動き出している。アキュラホームが主宰する工務店ネットワークのジャーブネットは、3月末まで「木のスマートハウス NEO」を500棟限定で販売している。こちらは1600万円からの比較的購入しやすい価格帯であるうえ、大学教授など有識者の協力を仰ぎながらさまざまなコストダウンの工夫が施された高機能なエコ住宅だ。また太陽光発電設備の設置や、国の支援策や創エネルギーシステムを付加することで月々の返済額を極力抑え、同社曰く、最大で実質負担額月々1万円にすることも可能だという。
今回の増税だけでなく、来年10月にはさらに2パーセント、消費税率10パーセントに引き上げられようとしている。段階的な引き上げが功を奏して、大きな混乱を避けられるのか、それとも不況に戻ってしまうのか。4月以降の住宅販売市場の動向が一つの目安となりそうだ。(編集担当:藤原伊織)