東日本大震災以降、原発に対する不安と不信によって日本国中の原発の再稼動が見合わされている中、現在、国内で唯一稼働中の関西電力大飯原子力発電所の3号機・4号機が定期検査によって、3号機は9月2日、4号機は9月15日から停止する予定となっている。
現在の状況としては、定検後の再稼働の見通しは立っていない。
このような状況の中、原子力発電や火力発電の発電量には及ばないまでも、太陽光発電をはじめ、風力や水力、バイオマスなどの安全面でのリスクが少ない発電モデルが注目されている。中でも、バイオマス発電はこれからの市場拡大に期待が寄せられている分野だ。
間伐された廃材や木炭、肥料、作物残渣などを原料とするバイオマス発電の燃料資源は世界中に豊富に存在しており、実質、無尽蔵といえる。実際、バイオマスは現在、世界の1次エネルギーの約14%を供給していると推定されている。
海外ではすでに、積極的にバイオマス発電事業への取り組みがはじまっている。例えば、イギリスでは2012年1月から発電容量750メガワットを誇る世界最大のバイオマス燃料発電施設が稼動しているほか、大小様々なバイオマス発電施設が急増しており、今後10年間にバイオマス発電は急速に拡大すると予想されている。
また、一般的に発電効率が20%程度といわれるバイオマス発電において、スイスでは発電設備から地域暖房や製材所、工場などへの熱供給を組み合わせたコージェネレーションを展開することで高効率化に成功しており、とくにチューリッヒ市郊外にあるアウブルッグ木質バイオ発電所では90%という非常に高いエネルギー利用効率を実現している。
日本国内でも、バイオマス発電事業は新たな収益モデルとして、企業の参入が増えつつある。例えば、製紙大手の王子ホールディングス<3861>などは、この分野に積極的な企業の一つだ。同社では、グループ資源を活用した資源環境ビジネスの一層の拡大を目指しており、発電事業はその大きな柱の一つと考えている。
同社の100%子会社である王子グリーンリソース株式会社は7月、北海道江別市に発電事業を目的とするバイオマスボイラーを設置することを発表したほか、間伐材などを使った大型のバイオマス発電事業を静岡県と宮崎県、北海道で2015年から始める計画を明らかにした。
また、昭和シェル石油<5002>でも、電力事業を石油事業、太陽電池事業に続く第三の柱へと育成する成長戦略の一策と捉えており、神奈川県川崎市に発電能力が4万900キロワットにのぼる国内最大規模のバイオマス発電所を160億円かけて建設することを発表している。さらに自治体においても、島根県などが森林整備加速化・林業再生事業の一環として「木質バイオマス発電事業化支援」政策を発表し、補助金8億円と資金18億円の枠を用意して、進出企業を公募し、このたび2社への支援が決定した。
コストの問題など多くの課題はあるものの、数百人規模の雇用の創出やCO2の削減効果、温室効果ガスの抑制にもつながるといわれており、長期的にみれば、他の再生可能エネルギーよりも経済効果があるという考え方もある。地域の森林業や製材業と連携することで経済効果を高めることが出来れば、バイオマス発電事業はこれからの成長分野として大いに期待が持てそうだ。(編集担当:藤原伊織)