今年の「ル・マン24時間レース」 前哨戦のWEC緒戦でワンツー・フィニッシュを決めたトヨタは勝てるか?

2014年04月30日 12:16

Silverstone

4月20日、英シルバーストーン・サーキットで行なわれたWEC開幕戦で、写真の2台・トヨタ「TS040 HYBRID」が「ワンツー・フィニッシュ」を決めた。「ル・マン24時間」に向けた前哨戦は5月3日のベルギー「スパ・フランコルシャン6時間」だ。

 自動車レースの世界で「WEC(World Endurance Championship/世界耐久選手権)」というカテゴリーをご存じだろうか。これはFIA(世界自動車連盟)が運営するレーシングカーの耐久レース。今年は4月にシーズンインし、年間8戦のレースで選手権を決定する。世界の8カ所のサーキットで6時間以上の耐久レースとなる。日本の富士スピードウェイでも行なわれ、今年は10月12日に開催される予定だ。

 このレースの魅力は自動車メーカーのワークス部門が、最新で最高水準のテクノロジーを採用し製作したスーパーレーシングカーが覇権を競うことだ。

 また、WECシリーズ戦に、仏サルト・サーキットで行なわれる、あの有名な「ル・マン24時間レース」が組み込まれている。今年は第3戦で6月14日-15日に開催される。そのためWECシリーズ緒戦の4月20日の英「シルバーストーン6時間」と5月3日の第2戦・ベルギー「スパ・フランコルシャン6時間」が、ル・マンで総合優勝を勝ち取るための試金石となる。

 「ル・マン24時間レース」は2000年代に入ってから「アウディ」が圧倒しており、2000年から昨年2013年まで12回の優勝を果たしている。WEC年間でも同チームが2012-2013年連続総合優勝を決めた。

 2012年からトヨタもワークス体制を敷いてWECに参戦、2012年に3勝、2013年に2勝をあげているが、その他はすべてアウディが優勝している。「ル・マン24時間レース」においてアウディの伝統の前に屈している。

 アウディのレース車両は「R18 e-tron クワトロ」で、4輪駆動システム「クワトロ」と電気自動車の「e-tron」を組み合わせたハイブリッド車だ。4リッターV型6気筒ターボディーゼルエンジンが後輪を駆動し、独ボッシュ製のモーター・ジェネレータ・ユニット2基が前輪を駆動する。トランスミッションは6速Sトロニック(セミオートマティック)だ。

 一方、アウディの牙城に挑むトヨタは、今年から新型車両の「TS040 HYBRID」を投入する。このモデルは自然吸気3.7リッターV型8気筒ガソリンエンジン(520馬力)に前輪と後輪を駆動する480馬力のモーター・ジェネレータ・ユニット(MJU)2基がアシストする4輪駆動車。前輪用のMJU&インバータはアイシン製、後輪はデンソー製で、エンジンと組み合わせるシステム開発はトヨタの東富士技術研究所が担当した。この研究所では次世代市販車向けスポーツハイブリッドの開発も行なっている。

 そこで、2014年WECの開幕戦の結果だ。4月20日の英「シルバーストーン6時間」は荒天に見舞われ、ドライ路面とウエット路面に繰り返し変化。ウエット路面に脚を取られた格好でアウディ車2台はともにクラッシュしリタイア。トヨタTS040の2台が初のワンツー・フィニッシュを飾った。

 この英シルバーストーンのレースでは、ドライとウエット路面に翻弄されながら、タイヤの選択とピット作業でトヨタが勝利した。が、5月3日のベルギー「スパ・フランコルシャン6時間」のレースが今年の「ル・マン24時間」を占う意味で重要な一戦になるのは間違いない。ここでトヨタが勝利できたなら、6月14日-15日のル・マンで総合優勝に期待が持てる。

 また、今季「ル・マン24時間」には2015年からWEC参戦を目指す日産が、特別エントリー枠を利用して、昨年の東京モーターショーで展示した電動駆動レーシングカー「NISSAN ZEOR RC」で参戦する。これは1.5リッターガソリンターボエンジン(400馬力)に300馬力のモーターを組み合わせた未来的なエクステリアを持つモデルだ。(編集担当:吉田恒)