国内最高峰の自動車レースから生まれる数10億円規模の新しいビジネスモデル

2013年12月18日 11:20

GT-R

2013年、国内最高峰の自動車レース『SUPER GT』に参戦したチーム「OGT! Racing」のレースカー、日産GT-R。来季はトヨタ・プリウスGTが主力車種となる予定だ。

 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン(フリースケール)は、自動車向け半導体で世界的に業界をリードするメーカーだ。そのフリースケールが2012年から日本国内最高峰の自動車レース『SUPER GT』に参戦するチーム「OGT! Racing」をスポンサードしてきた。同時に、車載システム「次世代ドライバー・アシスト・システム(ADAS)」の実装実験をレースを通じて実施してきた。

 その実験は2013年も継続。チーム「OGT! Racing」は過酷なSUPER GTクラスに日産GT-Rで参戦。サーキット走行という条件下で得られた実験成果は以下のとおり。

 まず「車両情報」である速度、エンジン回転数、ステアリング舵角、車両姿勢などのデータを取得。加えて、走行中・停車中を問わず車両周辺情報(アラウンドビュー・カメラによる車両周辺情報)の探知、運転者情報(ドライバーの発汗や心電図、筋電力などを取得、モーション・センサーにより筋肉の動きを計測)などのデータをバックヤードに転送。これまで個別に収集していたデータを時間軸の上で同期させて解析することで、より有効なデータに加工することができることを実証したという。

 フリースケールでは、こうしたスポンサー契約とレーシングカーでの実験を2014年以降も続ける計画だ。「OGT! Racing」チームと共同で行なう来季の実装実験テーマを発表。これまでの成果を発展させた、クルマとガレージを通信で結び、車両の自己診断とその診断情報をフィードバックする機能を追加した「Intelligent Garage」モデルを構築する予定だという。

 この実験によって「カメラ監視による盗難防止」「走行情報の蓄積・分析により、運転者に合わせたエコドライブの提案」「オイル漏れやタイヤ圧の減少などの異常検知し故障を未然に防ぐ、あるいは最小限に抑える」「運転者の健康状態を確認」など新しいビジネスモデル「Intelligent Garage」を構築する、とフリースケール・ジャパンのデビッドM・ユーゼ社長は語った

 この「Intelligent Garage」サービスは、次の段階としてInternet of thingsへの発展、医療機関、ディーラー、車検、保険会社、ヘルスケア市場でもアレンジして使え、新しいビジネスを創出することを期待しているという。

 フリースケールは騒音、加重、高熱、過度の電気信号障害など、市販車の走行条件に比べて過酷な環境であるモータースポーツで、予測安全と運転支援、非常時の対応を含むADASの実装実験でビジネスモデルの創出に取り組む。前出のユーゼ社長によると、「スポンサードした初年度だけで実装実験から数10億円の新たなビジネスが生まれた。2013年は、その30%アップになるだろう」と語り、「OGT! Racing」チームの日産GT-Rに加えて、2014年チームに加わる主力車種「トヨタ・プリウスGT」でもスポンサード&実装実験する予定だ。(編集担当:吉田恒)