夫婦ともに長生きして、死後も同じ墓の穴で添い遂げるほど、夫婦の契りの固いことを「偕老同穴」(かいろうどうけつ)というが、すべての夫婦がそのような幸せな結婚生活を送れるわけではない。厚生労働省が発表している「平成25年(2013)人口動態統計の年間推計」によると、2013年の婚姻件数66万3000組に対し、離婚件数は23万1000組となっている。つまり、66万人が生涯の愛を誓い合った一方で、その3割以上にあたる23万人もの夫婦が、生涯の別離を選択したのだ。しかし、そのほとんどは結婚当初から離婚を想定していたわけではないだろう。願わくば、偕老同穴な夫婦生活を夢見ていたはずだ。
夫婦円満の秘訣や別れの理由は千差万別であろうが、その中でも大きな原因を握りそうな寝室環境について、積水ハウスが大変面白い調査を行っている。同社が1990年から暮らしと住まいのあり方を探り、評価・研究する施設として展開している「総合住宅研究所」2013年10月、夫婦の同寝室と別寝室に対するWebでのアンケート(回答者数 男性754名・女性1590名)を実施している。それによると、子供の誕生をきっかけに夫婦別寝がすすむ傾向がみられ、40代以降になると、とくに女性が夫と同寝室を希望する割合が半数を下回ることが分かる。既婚女性1290名のうち、同寝室を希望する572名の理由としては、「特に離れる理由がないから」が70.6%、次いで「夫婦だから」が38.8%と、漠然とした意見が大半を占めている半面、とくに60代以降では「経済的・省エネだから」(37.9%)「お互いを見守りながら眠れるから」(31.6%)と、他の年代よりも具体性が増しているのが面白い。
一方、別寝室を希望する718名は「相手のいびきや歯ぎしり、寝言などがうるさい」が61%となっているほか、温度設定や起床時間の違いなどが多くを占めており、「愛情がさめたから」という回答は9.6%に留まっており、必ずしも「愛情」と「別寝」が比例するものではないようだ。
また、積水ハウスではこの調査結果をもとに、別寝室を希望する理由の多くは、好みの生活環境や生活時間のずれにあると推測して、同寝室でもベッド間をレースカーテンで間仕切ることでパーソナルスペースを確保し、照明や空調の温度もそれぞれ別に設定できる寝室の提案なども行っている。さらには顔が直接見えないことで、今まで話しづらかった夫婦間のことも、思いのほか話しやすくなるという実体験した方の意見等もあるようだ。
同調査では、同寝室が夫婦円満の鍵となるかどうかを確かめることは出来なかったとして結んでいるが、今後、超高齢社会を迎える日本にとって、「お互いを見守りながら眠れる」という環境も考える必要があるのではないだろうか。同調査では、一度別寝室になってしまった夫婦は、その後同寝室に戻る、もしくは戻りたいと願う割合は20%以下というデータを示している。家庭内孤独死を防いだり、急病の際の迅速な対応のためにも、カーテンなどで緩やかな境界をつくる方法も検討してみるのもいいかもしれない。(編集担当:藤原伊織)