「女性活用」を掲げる安倍政権は、専業主婦(主夫)世帯の税負担を軽くする「配偶者控除」の見直しを検討している。会社員の夫と専業主婦の妻がいる場合、妻の所得が年間103万円以下であれば、夫の課税所得から38万円が差し引かれる制度だ。86年に導入され、約1200万人が恩恵を受けている。だが、ここ十数年は共働き世帯が専業主婦世帯を上回っており、不公平感も強まってきた。
制度をなくせば専業主婦だった女性が働きに出るインセンティブとなり、税収も確保できる。国税だけで3800億円の増収となり、増収分を両立支援などに活かせば「女性の社会進出」をより後押しできる……という青写真は、果たして描けるのか。
政府の調査では、0~17才の子供がいる母親の6割が働いている。だが正社員の割合は20%前後に過ぎず、パートやアルバイトなど非正規雇用がその2倍近くを占めている。「平成24年 国民生活基礎調査の概況」によると、下の子供が3歳になるまでは約半数の母親が「仕事なし」。子供が3歳になる頃から、正社員ではなく非正規職員として働きに出る女性が増えていく。
注目すべきは、子の年齢が高くなるにしたがって育児の負担は少しずつ軽くなるはずなのに、正社員になる母親の割合は全く増えていかないことだ。むしろ、子供の年齢が上がるにつれ「非正規職員・従業員」の割合が増えていく。出産で退職した女性は、時間が経てば経つほどフルタイムでの復帰が難しくなるのだ。
配偶者控除が廃止されれば、フルタイムで働こうとする母親は増えるかもしれない。だが長時間労働が当たり前の日本企業では、家庭と仕事の両立は難しい。「働きたいが、フルタイムでは無理そう」「子供を預けてまで長時間働きたいと思わない」という女性も多いだろう。こうした女性にも働いて欲しい、という思惑が政府にあるならば、保育所や家事代行サービス、病児保育施設などの拡充はもちろん、サービス残業が美徳とされる労働のあり方自体を見直す必要があるだろう。(編集担当:北条かや)