人や車の流れを大局的に把握 富士通研が軌跡分析技術を開発

2014年05月11日 19:37

 GPSや、公衆無線LANなどを用いた測位技術の普及により、人や車が実際に移動した位置情報を低コストで収集できるようになった。このような位置情報を時刻順に並べて生成される軌跡データを、都市計画や交通政策の立案、あるいはマーケティングに活用することで、社会システムの効率化や、ビジネス上の競争優位性を獲得することに大きな関心が集まっている。

 特に、出発地と到着地だけを集計するOD(Origin Destination)分析や、移動中の経由地も含めて集計する経路分析によって、大域的に人や車の流れを把握し、行先の推薦や移動時間予測などを精度よく行うための軌跡分析の技術が求められている。

 交通分野の軌跡分析では、軌跡データの含まれるすべての座標を道路地図上の道路データに対応させ移動経路を分析する方法が一般的だ。しかし、道路データが細かすぎて交通の流れが分散して見えてしまうという課題があった。

 これを受け、株式会社富士通研究所は7日、GPSなどで測位した軌跡データを分析に適した形にまとめ、人や車の流れを大局的に把握できる軌跡分析技術を開発したと発表した。

 今回、軌跡の形状を考慮した類似度に基づいて軌跡データを集約し、大局的な人や車の流れを表現した経路グラフを生成することにより、道路データを用いることなく経路分析のような大局的な交通流分析が可能な技術を開発した。この技術により、道路が封鎖された時の混雑地点の早期予測や、道路地図がない大規模テーマパーク内の人の流れ、航空機や船舶の航路分析などへの応用が期待されるという。

 具体的には、曲線の類似度に基づいて、似たような軌跡データを集約することにより、軌跡データを簡約化した経路グラフを生成する。この際、単に軌跡データ中の座標間の距離を用いて集約すると、部分的に似ている箇所が局所的に集約されてしまい、大域的な交通流として保持することができない。そこで、軌跡データを曲線としてとらえ、その類似度で集約することにより、類似した軌跡データを大域的な交通流として保持し、抽出することが可能になった。

 また新技術では、曲線の類似度という明確な基準で軌跡データを集約しており、道路データとは無関係なため、道路の選択に関する優先度設定は不要。これにより、前処理と軌跡分析の実行は、道路網改変の影響をほとんど受けない。また、道路データを用いないため、集約の粒度を自由に設定可能である。

 これらにより、マラソン大会などの大規模イベント開催時に、多くの人が利用する迂回ルートを素早く見つけられ、事前の推奨通行ルートの設定や誘導計画に反映が可能となる。また、道路データが不要なことから、道路地図がない大規模テーマパーク内の人の流れ、航空機や船舶の航路分析などへの応用も可能だ。富士通研究所は、この技術の実証実験を進め、2014年度中の製品搭載を目指す。(編集担当:慶尾六郎)。