実効データ転送速度を10倍に高速化 富士通研がデータ転送高速化技術を開発

2014年04月14日 15:20

 現在、企業における業務システムのクラウド化やデータセンターへのサーバ集約により、複数のデータセンター間や、端末とデータセンター間におけるデータ転送が急増している。データ転送を高速化するためには回線増強や高速化のための専用ハードウェア導入が考えられるが、コストがかかり、なおかつ、クラウド環境や仮想環境、モバイル環境などへ柔軟に適用することが困難という課題があった。

 これを受け、株式会社富士通研究所は8日、クラウドサービスやモバイルアプリケーションなどで利用する様々な通信環境に適用可能なデータ転送高速化技術を開発したと発表した。

 今回、同社が開発したのは重複除去と圧縮により転送データ量を削減し、ソフトウェアだけでデータ転送を大幅に高速化する技術。この技術を適用することで実効データ転送速度を最大で約10倍に高速化できる。このため、回戦増強のコストをかけずにクラウドサービスなどで利用するデータセンターと端末の間における多様な通信環境でのデータ転送を高速化することが可能になる。
 
 回線を増強せずにデータ転送を高速化するためには転送データのサイズを削減する方法が有効である。一度送信したデータを送信側と受信側の双方で保存しておき二度目からは同じデータを送らない重複除去技術や、ファイル圧縮などに使われているデータの圧縮技術といった2つの手法がある。重複除去や圧縮の技術は、ストレージシステムや転送高速化の専用ハードウェアなどに実装され、データ転送量を削減し、実効データ転送速度を高速化することが可能だ。

 しかし、これらの技術をモバイル端末などに適用するソフトウェアで実現するには、重複除去では一度送信したデータを双方がストレージに保存しておく必要があるためモバイル端末のストレージなどでは容量が限られ実現が困難、一般的なモバイル端末に搭載されたCPUでは、重複除去・圧縮のCPU負荷が高く通信全体の処理に時間がかかる、といった課題があった。

 これに対し今回、同社はネットワーク上を流れるデータの中で統計的に出現頻度の高いデータだけを選択し、優先的に保存する技術を開発した。これにより、高い重複除去性能を維持したまま、出現頻度の低いデータがストレージに保存されることを低減できるため、ストレージ容量の少ないモバイル端末にも適用が可能になる。社内実験では、モバイル端末側のストレージに保存する重複データ量を最大約80%削減できることを確認した。

 また、圧縮処理のCPU利用率を、最大で従来の約4分の1に削減する、データ圧縮技術も開発した。データ内に繰り返し出現するデータパターンを探索する際にパターンが見つからないときは、まばらな間隔で探索を行う。パターンが見つかったときには、その前後のデータを細かく探索することにより、データ全体を効率良く探索し、圧縮処理の時間を大幅に短縮する。

 同社はこれらの技術を用いることで、クラウドや仮想環境、モバイル環境において、様々な通信アプリケーションを快適に利用することが期待できるという。また、ソフトウェア化することで、既存のサーバやOS上に搭載可能で、ノートPC、タブレット端末、スマートフォンなどのモバイル端末でも利用可能な技術であるとしている。(編集担当:慶尾六郎)