最近、大気汚染や土壌汚染など、とかく中国の環境問題が様々な面で指摘されている。そして、その中でも最も「ヤバイ」と考えられているのが水問題だ。
中国水科院水資源所の王浩所長は昨年、「北京が今直面している水問題は、世界中の他の水不足問題を全て合わせたよりも危機的である」と発言し物議を醸した。しかも、専門家らによればこの発言は決して誇張ではなく、事実をありのままに話したに過ぎないという。
中国の一人当たり水資源量は世界平均の約4分の1程度しかない。しかも広大な土地に人と水資源が均等に分布しているわけではないのだ。大規模な農耕地を持ち、全人口の40%が暮らす北部地方の降水量は、全体降水量の12%にすぎない。そして、残り約80%の雨が集中する南部では、工業の発達により水質汚染が急速に進んでいる。このバランスの悪さが中国の水不足を更に深刻なものにしているのは間違いない。
中国は急速な経済発展を成し遂げるために、水資源に対し無計画な産業発達を推進してきた。つまり、工業用水の浄化システムを導入しないまま生産力だけを追及してきたのだ。また、工業を支えるエネルギー産業(発電や石炭の採掘・加工)においても水資源の約20%を消費してしまっている。この値は他の先進国と比べるとなんと4倍から10倍にもなる。
国連環境計画(UNEP)の基準によると、1人あたりの年間水資源量が1700立方メートルを下回る水準を「水不足懸念」と呼ぶ。また、1000立方メートルを下回ると「水不足」、そして500立方メートルを下回る場合は「絶対的水不足」と分類する。この基準を中国の主な都市と照らし合わせると、北京や上海をはじめ、天津市、寧夏回族自治区、河北省、山西省、山東省、江蘇省といった8省市自治区が「絶対的水不足」に該当してしまう。特に北京市は500立方メートルに遥かに及ばない100立方メートル未満である。
我々が旅行で上海や北京を訪れても、観光地やホテルで水不足を実感することはないだろう。同じように住民達も普段の生活の中で水が足りないと感じる場面はほとんどない。しかし、これは経済都市に対して中国全土から強引に水を集めるとともに、大量の再生水を活用しているためだ。
中国の経済がこれからも発展することは全世界が認めている。そして、それと共に水不足がより深刻化することもほぼ規定路線だ。
中国国民に危機意識はまだほとんど無いようだが、現実はとっくに危険水域を突破していると言えるだろう。(編集担当:久保田雄城)