総務省はこのほど「ICT国際競争力強化・国際展開イニシアティ」中間とりまとめを公表した。とりまとめでは低迷が続く我が国のICT国際競争力について強い危機感を示した上で、状況を打開するために2020年に向けて世界をリードし、知識と情報を戦略的に活用する「知識情報立国(スマート・ジャパン)」を目指すと宣言した。
ICTはもはやすべての社会・経済活動の基盤であり、その果たすべき役割は大きい。しかしながら、グローバルICT市場における日本の国際競争力は、ここ10年低下の一途をたどっており、負のスパイラルに陥っている
世界経済フォーラムによるICT競争力ランキングの推移をみると、2013年の1位はフィンランド。日本のランキングは05年の8位をピークに下降し、13年は21位にまで落ち込んだ。一方で韓国や中国の躍進は目覚ましく、特に韓国は13年には11位まで順位を伸ばしている。
取りまとめではこのような状況に陥った我が国の課題として、1)トータルな戦略性が欠如していること、2)国内市場偏重の市場構造であること、3)ビジネスモデルの創造とエコシステム作りが下手であること、4)意思決定のスピードが遅いこと、5)マーケティング戦略が欠如していること、6)技術の出口戦略がないために、世界的に技術のプレゼンスが低下し、標準化にもコミットできていないこと、7)起業環境整備が遅れていること――等を挙げている。
その上で、こうした状況を打開するため、ICT国際競争力強化・国際展開の推進についての取組を強化することが急務とした。
2020年に向けたビジョンでは、リアルとバーチャルが融合した、「知識・情報」をあらゆる産業分野、社会経済活動において戦略的に活用する「知識情報立国(スマート・ジャパン)」を目指すことを明記した。
スマート・ジャパンの実現に向けては、あらゆる国に満遍なく、画一的なICT製品・サービスを展開するのではなく、「何を戦うか(分野)」、「どこで戦うか(市場)」、「どこと戦うか(競争相手)」を明確にした上で、分野や地域を絞り込んだ戦略を立てる必要があると指摘。現在のポジションを維持するのではなく、それを失ってでも新たな分野に打って出る戦略が必要であると、攻めの姿勢を鮮明にした。
このほかインフラ、防災、医療、教育、資源、電子政府、金融等などICTをパッケージで展開することを提案。また「安全・安心」、「おもてなし」をキーワードに新たなアーキテクチャを創造するとした。
中間とりまとめの大前提にあるのは「歴史的分岐点に立っている」という強い危機感。中国や韓国の台頭と反対に、下降気味である我が国の国際競争力への強い危機感から、我が国の戦略を「全体として中途半端」などとばっさり切っている。確かにこれといった資源もない日本が世界で地位を確立するには、「知識」しか拠って立つところはない。残された時間は、あまりないのかもしれない。(編集担当:横井楓)