経済状況というものは、国内だけで完結するものではない。経済のグローバル化が提唱されて久しい昨今、自国の経済の先行きを見通すためには、他国の、また世界の経済状況についても知っておく必要がある。そうした世界経済の成長率に関する見通しを発表しているのが世界銀行であるが、10日、その世界銀行が2014年の「世界経済見通し(GEP)」を発表。それによると、今年の経済成長率を1月時点での3.2%から2.8%に下方修正したことが分かった。
そうして下方修正がなされた理由として世界銀行は、アメリカでこの冬に発生した記録的な寒波による影響、またウクライナの政情不安などを挙げている。
地域別に見てみると、アメリカは寒波の影響により国内総生産(GDP)が一時マイナスに転じたことを踏まえ、2.8%から2.1%に下方修正された。また途上国全体についてもウクライナの政情不安を理由に5.3%から4.8%に引き下げられた。ウクライナそのものの成長率はマイナス5%であった。そのほかロシアが0.5%、ブラジルが1月時点の2.4%から下方修正され1.5%、インドも6.2%から下方修正され5.5%、中国も7.7%から7.6%に引き下げられた。
そして日本の成長率の見通しについては、4月1日に実施された消費税増税の影響により、14年、15年ともに1.3%にとどまるとの予想がなされた。世界銀行は、消費税増税前の駆け込み需要に伴う反動減の影響は終息の兆しが見え始めているとしつつも、今後日本経済が安定的な成長を遂げるためには構造改革の成功にかかっているとし、日本政府に対して改めて構造改革の実施を促した。
今回の発表に際しジム・ヨン・キム世界銀行グループ総裁は、「途上国の成長率は、所得の下位40%の人々の生活を向上させ必要な雇用を創出するには、はるかに小幅にとどまっている。各国は、我々の世代のうちに極度の貧困を撲滅するために必要なレベルまで広範な経済成長を達成しなければならない。そのためには、国内の構造改革について加速化と投資拡大が不可欠」とのコメントを発表している。
私たちの住む日本もこうした「世界経済」に含まれている以上、今回の結果は決して「他人事」でも「海の向こうの話」でもない。世界経済が安定的に成長を遂げるためには、日本はもちろんのこと、各国でも構造改革が必要不可欠。これが私たちの住む世界の経済の現状なのである。(編集担当:滝川幸平)