どこまで続くルネサスの迷走 表示ドライバIC事業をシナプティクスに売却

2014年06月15日 11:39

 ルネサス エレクトロニクス<6723>は11日、同社の連結子会社である株式会社ルネサスエスピードライバ(RSP)の同社が保有する全株式を米Synaptics Incorporated(シナプティクス社)の子会社である独Synaptics Holding GmbH(シナプティクス ホールディング社)へ譲渡することを決定したと発表した。また、同件株式譲渡により、RSPの子会社であるRenesas SP Drivers Taiwan Inc. (RSP-TW)が、ルネサスの子会社から異動する。

 ルネサスは現在、収益回復に向けてリストラや構造改革を進めている。これらの中で、ターゲットとする分野を自動車(車載制御、車載情報)、産業・ネットワーク(産業・家電、OA・ICT)、汎用という3つの分野に注力するとしている。一方、RSPはこれらの注力分野に該当しない表示ドライバICを事業対象としているため、譲渡に至ったという。

 今回シナプティクス社からRSPのルネサスが保有する全株式を取得したいとの申し入れがあり、これを検討した結果、RSPの中小型液晶パネル向け表示ドライバIC技術との融合でモバイル端末向け事業を強化したいシナプティクス社の子会社であるシナプティクス ホールディングス社に株式を譲渡することを決議した。

 売却するRSPは、本社所在地は東京都小平市上水本町五丁目20番1号。資本金は50億円、2008年3月11日に設立された。中小型液晶向けドライバ・コントローラの設計・開発および 販売・マーケティングを事業内容としており、旺盛なスマートフォン・タブレットPC向け需要に牽引され、3期続けて増収益となるなど好調な業績を続けている。

 ルネサスの持ち株は5万5000株(所有割合:55%)、譲渡価額は、発表時点では未定。譲渡は2015年3月期第3四半期の予定だ。

 今回の株式譲渡により、ルネサスは注力事業への集中を加速するとしているが、RSP 自体の業績は好調だ。しかし、今後この分野の競争が激化すると予測されることから、それを恐れ売却にいたったものとみられる。ルネサスの迷走はまだまだ続く。 (編集担当:慶尾六郎)