八王子市に本社を置く菊池製作所<3444>。資本金3億5,800万円、従業員数408名。同社は金属及びプラスチック製品の試作並びに量産設計・製作・販売を手掛けている。2012年4月期の売上高は62億7,500万円、翌13年4月期は56億7,400万円。12年4月期の営業利益は4億3,900万円、13年4月期は7,000万円の赤字。売上、利益とも直近3年間は減少傾向にある。
減収減益にもかかわらず、13年7月1日には511円だった同社の株価は14年6月16日には一時10,140円をつけている。1年で19倍以上に大化けしたことになる。12年11月、経済産業省と厚生労働省は、ロボット技術による介護現場への貢献や新産業創出のため、「ロボット技術の介護利用における重点分野」を策定した。これをきっかけにロボット技術は国策事業として投資家の熱い注目を集め、その代表銘柄として同社株は急騰を演じることとなったのだ。
人口減に加えて高齢化や人手不足は日本国内の成長力の障害となるため、解決すべき課題として浮上している。「人口減社会に突入した日本にとって、ロボット分野は将来性がある」。ロボット産業の成長性をそのように評価するアナリストもいる。ロボット技術はその課題克服に一役買うもので、株式市場でも「筋のいいテーマ」と受け止められているのだ。
6月16日には読売新聞朝刊が「政府が価格が低くて使いやすいロボットの普及に向けて、補助金を出すなどして支援する」と報じたことなどを受けて、同社の他に介護ロボットの開発を手掛けるサイバダイン<7779>や第一精工<6640>、川田テクノロジーズ<3443>などもロボット関連として動意付いた。市場ではロボット関連物色について「ただのマネーゲーム。手詰まり感のなかで、値動きのいい中小型株を循環物色しているにすぎない」として冷めた見方もあるが、ロボット関連銘柄には多くの投資マネーが流れ込んでいる。
日本はロボット開発に不可欠な技術に高い競争力を有していることに加え、自動車産業や電機産業などで培われた優れた技術を活用することが可能であり強みを持っている。一方で、実用化を進める上で最も重要なユーザーが実生活でスムーズに使うことが出来る製品に仕上げるためのテスト環境が十分に整っていないという課題も指摘されている。ただのマネーゲームに終わってしまうのか、真の国策として日本を代表する産業へと成長するのか、大きな期待が寄せられている。(編集担当:久保田雄城)