東芝<6502>は24日、英国シェフィールド大学が英国政府系研究機関である工学・物理化学研究委員会(Engineering and Physical Sciences Research Council (EPSRC))の助成を受け、配電会社のウェスタン・パワー・ディストリビューション社と連携して実施する系統周波数調整用蓄電池システムの実証試験向けに蓄電池を受注したと発表した。蓄電池を9月に納入し、実証は11月から開始される予定だ。
英国では、2008年に施行された気候変動法により、温室効果ガスを2050年には1990年比80%削減する目標が掲げられている。この実現に向けて洋上風力発電を中心とした再生可能エネルギーの導入が拡大しており、電力の安定供給に向けた周波数変動抑制や送配電網の拡充・整備などが課題となっている。
今回受注した蓄電池は、チタン酸リチウムを用いた1MWh相当の容量の同社製リチウムイオン二次電池「SCiBTM」。約1万回以上の充放電が可能な長寿命、高い安全性、高入出力などの優れた特性が評価されての受注となった。英国ウェスト・ミッドランズ州ウォルヴァーハンプトンのウィレンホール変電所に設置され、気象条件により出力が変動する風力発電や太陽光発電の導入拡大に伴う系統周波数調整に用いられ、電力の安定供給の維持に貢献する。
矢野経済研究所では、2020年度の定置用蓄電池(ESS)市場規模(メーカー出荷容量ベース)は、2015年度比で 912.3%、1149万9980kWhになると予測している。需要分野別では、20年度のメーカー出荷容量の7割以上を今回東芝が受注したようなグリッド用(系統安定化用途)が占めると予測している。
東芝も蓄電池システム事業には注力しており、これまで、国内では、横浜市や宮古島市が進めるスマートコミュニティ実証事業に参画している。また、アンシラリーサービス向けには東北電力<9506>から世界最大級の出力40MWの蓄電池システムを受注している。
海外では、スペインで電力大手のガス・ナチュラル・フェノーサ社と配電系統の高効率化・高信頼度化を目指して実施する可搬型蓄電池システム実証試験プロジェクトに参画しているほか、商用ではイタリアのローマ市配電・水道公社であるアチア社から蓄電池システムを受注するなど、国内外で事業を展開してきた。今回も英国から大規模な受注となり、再生可能エネルギーの安定供給に一役買う。(編集担当:慶尾六郎)