流動食市場は2010年度で640億円と推定されており、年率10%前後で成長しているという。富士経済の予測では2020年には1286億円になるという。これは、医療の発達と高齢化人口の増加によるもの。
一般的に流動食とは通常の食事を十分に摂ることができない方向けの食品であり、液体タイプと半固形状タイプがある。前者は摂取しやすいが、食道を逆流して気管に入ることで起こる誤嚥性肺炎や下痢を引き起こすことがある。後者は誤嚥性肺炎や下痢を引き起こす頻度を下げると言われている。
しかし、直接胃に食事を注入するために腹壁の外側と胃の中をつなぐために、腹壁に開けられた小さな穴である胃ろうと比べて管が細い鼻から胃または小腸まで細い管を通す経鼻経管による摂取には使用できないことがあるのだ。
カネカ<4118>は19日、摂取時は液体で胃の中で半固形状になるよう設計した粘度可変型流動食を開発したと発表した。テルモ株式会社に販売を委託し2014年6月末より販売を開始する。
同社は食品とライフサイエンス技術を結集し、天然の海藻に含まれる食物繊維の一種であるアルギン酸塩が酸性下でゲル化する特徴を応用することで、摂取時は液体で胃に入りpHが低下すると粘度が上昇し、液体から半固形状になるよう設計した。
新製品は、介護の現場などで、安心かつ安全への貢献が期待されるという。国内半固形流動食市場で高いシェアをもち、事業の拡大・強化のためにさらなる製品拡充を目指していたテルモのニーズに一致し、本年4月、開発から製品供給は当社、販売はテルモという内容の売買契約を締結した。カネカは2016年には本製品で売上高6億円を目指す方針だ。
筆者も大病をしたことがあるので、入院中の食事にはつらい思いをした。食欲はあったものの、手術後しばらくは、流動食しか摂れず空腹感に悩まれた。しかも、前述のように誤嚥性肺炎を起こす危険が高いとかで、食べ方などを細かく注意され苦痛だった。今回の開発で少しでも安全性が上がるのなら、それに越したことはない。(編集担当:慶尾六郎)。