カネカ<4118>は、樹木に多く含まれるリグニンという成分の分解物を利用し、バイオプラスチックの一種であるポリヒドロキシアルカン酸(以下PHA)の合成に成功したと発表された。
現在世界各国で、石油資源からの脱却を目指し、植物バイオマスを利用して物質を生産することに関する研究が進んでいる。石油由来から新たなプラスチックの代替材料として注目されているのが「バイオプラスチック」である。この、生物が由来の資源であるバイオマスを主原料とする製品は、地球上の植物を原料とするため、大気中の二酸化炭素の量を相対的に増加させないという点があるが、実用化に向けいくつかの課題があった。
リグニンという、植物の細胞壁に含まれる成分の中には、微生物の細胞内でバイオプラスチックの一種になる「ポリヒドロキシアルカン(PHA)」が生成される前の段階の物質が多く含まれている。しかし、分解性が低いことや、分解後に得られる分解物が微生物などに毒性を示すこともあり実用化が難しかった。今回、様々な研究を重ねカネカは独立法人理化学研修所、環境資源化学研究センター、バイオマス工学連携部門酵素研究チームの沼田チームリーダーらと共同で、リグニンからPHAの合成に成功した。
この研究で合成されたPHAは、糖や植物油を原料に合成したPHAに比べて分子の量はやや低いが、フィルムなどのプラスチック製品としての利用が可能であるという物性を示した。この成果によって今まで難しいとされていたリグニンを利用し、微生物による物質の生産を目指した技術の基盤ができると期待できる。
また、プラスチックの生産だけではなく多様なバイオマス原料を利用した、バイオリファイナリー技術との融合により、幅広い物質の生産も期待できそうであり新たなバイオマス産業の構築の可能性が考えられる。
共同研究グループは、リグニンの分解とバイオプラスチックの合成を同時に進める、新しい微生物反応系の構築を目指すとのことである。(編集担当:高井ゆう子)