スキンケア市場では今、夏の乾燥肌対策が注目されている。乾燥による肌のトラブルといえば冬のイメージが強いが、実は、夏場もエアコンや紫外線などのために肌が乾燥しやすくなるのだ。
気温や湿度が上昇すると、それに比例して汗や皮脂の分泌が増加するため、肌の表面はしっとりとしているように思える。しかし、冷房を効かせるために締め切られた室内や、太陽の光と紫外線を浴びて乾燥しやすい環境である上に、肌がベタベタしているので、かえって肌の保湿ケアも疎かになりがちだ。中でも、紫外線の影響を受けやすい唇の乾燥やひび割れに悩む人は多い。
そんな中、ロート製薬株式会社は先日、新しくドーム型容器を採用した五感で楽しむ新感覚リップクリーム「Chu Lip(チューリップ)」を開発し、8月9日(日)から全国の薬局・薬店で新発売すると発表した。
日本のリップクリーム市場は、金額にして約160億円、数量では年間約35万個も販売される巨大市場だ。ロート製薬は、その内の約41パーセントのシェアを誇るトップメーカーでもある。1975年に「メンソレータムリップ」を発売して以来、「薬用キャンパスリップほそみ」などの人気商品や、日本初のジェリー状リップ「メンソレータム薬用リップオンリップ」など、日本のリップクリームを牽引してきた存在だ。また、日本だけでなく、中国、台湾、ベトナム、マレーシアなどにも進出し、それぞれの国でもトップシェアを誇る人気ブランドとして、揺ぎない地位を得ている。そんなロート製薬が、満を持して発売する「Chu Lip」は、これまでの同社の実績と経験を活かしつつも、新しいタイプのリップクリームとなっている。
何はともあれ、見た目の形状が異質だ。お菓子のマカロンを彷彿とさせる、コロンと丸みを帯びたフォルムの容器。そして、それを彩る淡いピンクやミントグリーンなどのパステルな色合い。容器には商品名やロゴマークなどは一切なく、側面中央の接続部にクチビル型のくぼみがわずかに確認できる程度。底面に貼られた小さなシールに、かろうじてロート製薬の社名があるものの、同社リップの看板であるはずのメンソレータムの名称は、そこにすら見当たらない。
容器を真ん中からくるくる回すとフタが開き、中からは半球形のリップ製剤が顔を出す。従来のスティック型のリップと比べると、表面積がかなり大きい。実は、従来のリップには「人前でリップを塗るとき、可愛くない」という女性特有の悩みがあった。そこで、可愛く塗れるようにと考案されたのが、この半球形の形状だ。これならば、表面積が広いので、上下のクチビルを一度に濡ることができる。しかも、その塗るときのクチビルの形が「チュー」をしているときの形になることから、商品名も「Chu Lip(チューリップ)」と名づけられたという。また、同商品のキーワードは「五感」で、見た目の形状や可愛さで視覚的な面白さをアピールするだけでなく、クチビルの上でとろけるような触感や、特長的な6種類の香り、さらには甘味成分のスクラロースを保湿剤として配合するなど、リップクリームとしては異例の「味覚」にまでこだわった意欲作だ。
リップクリーム市場は2005年頃から、売り上げの増減がほとんど見られない。業界では、この状況を横ばいではなく、需要の限界値に近いとみている。つまり、リップを必要としている人に対しては、ほぼ売り込みが完了している、非常に安定した市場なのだ。さらに、現在発売されているリップクリームでも大きな不満や改善点はなく、商品的にも成熟しているとみられる。そんな状況下の中、あえて挑戦的な新製品を発売する理由はなんだろう。
ロート製薬の担当者に聞くと、今回の新製品「Chu Lip」も、新規需要の掘り起こしが目的ではなく、既存客への新しいリップスタイルの提案が目的なのだという。顧客を飽きさせないサービス精神こそが、同社がリップクリームのトップメーカーとして、世界でも愛され続ける大きな理由の一つなのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)