「米連邦準備理事会(FRB)は当面、巨大な(資産規模を示す)バランスシートを持ち続ける」。イエレンFRB議長は先月の会見で率直に認めた。欧州中央銀行(ECB)や日銀は金融緩和の継続により、これからもさらにバランスシートの拡大が続きそうだ。
現在のマーケットは「グレートローテーション」(景気回復を伴った株式市場への資金の大移動)というよりも「ゴルティロックス」(好況でも不況でもない心地よい状況下での株高)だ。熱すぎもせず、冷たすぎもせず、ちょうど良い温度のスープを皆が味わっている。
ゴルディロックスとはイギリスの童話「ゴルディロックスと3匹のくま」の主人公である女の子の名前に由来する。童話では、熊の親子の家に迷い込んだゴルディロックスが、熱すぎず冷たすぎもしないちょうど良い温かさのスープを見つけ,次にちょうど良い堅さのベッドを見つける。ベッドで居眠りしていたゴルディロックスは帰ってきた熊の親子と遭遇し、ほうほうの体で逃げ出し、最後に痛い目にあうことになる。
米国株式市場ではNYダウなどの主要株価は高値を更新し、堅調に推移している。米国を中心に世界的に景気回復の兆しが見られる一方で、2007年のサブプライムローン問題以降の先進国の景気後退の爪痕は深く、6月5日にはユーロ圏でマイナス金利が採用されるなど各国・地域で緩和的な金融政策が継続されている。また、新興国においても、景気減速の足音が聞こえてくるなどバランスシートの本格調整はまだまだ先と考えられており、世界的に景気のけん引役が見当たらない中、金利上昇(債券価格の下落)も起きず、株価が上昇している。
金融緩和の宴はまだ終わらない。マーケット参加者はそう高をくくっている。それこそが最大の懸念材料なのかも知れない。「過度のリスク志向や借金が将来の金融システムの安定を損なわないか」とイエレン氏自身も懸念を示している。心地よいベッドで眠りについたとしても、熊はいつか帰ってくる。いつまでも宴は続かないし、いつまでも心地よいベッドで眠りつづけることはできない。その時、ゴルティロックスはどんなツケを払うことになるのだろうか。(編集担当:久保田雄城)