スペイン国債高騰が示唆する債券バブルの芽

2014年06月21日 13:49

 6月5日に欧州中央銀行(ECB)はデフレリスクに直面しているユーロ圏経済を支えるため、主要中央銀行としては初めてのマイナス金利の導入に踏み切った。マーケットは次第にECBの意図を織り込み始めた。5日には139円水準で推移していたユーロだが、週末には約1円下落している。しかし、注目すべきはスペイン国債の不自然なまでの高騰だ。

 9日の欧州債市場ではスペイン国債が値上がりし、10年債利回りは4年ぶりに米国債利回りを下回った。同様にイタリア10年債利回りも過去最低を更新した。さらに11日にはスペイン国債の2年物と5年物の利回りがドイツ国債を2日連続で下回った。利回りの低下は、債券が買われ価格が上昇していることを意味する。

 これら南欧諸国の債券を動意づかせたのは、先の金融緩和策に加えてECBのクーレ理事の発言だ。「非常に長い期間、数年にわたってユーロ圏の金融情勢が米国、英国と異なることは明らかだ。われわれは極めて長期間、金利をゼロ近くに維持する。米英は利上げ局面に入るだろう。それは市場参加者にとって決定的な要素だ」と述べた。米国や英国は先に金融引き締めへと金融政策を変更する。金利の上昇、つまり債券価格は下落するのに対し欧州ではまだまだ債券価格は高値に維持されることを示したのだ。

 ほんの数年前までは投資家はスペイン国債の金利を気に掛けるどころか、元本が償還されるかを懸念していた。スペインの失業率が人口の4分の1に相当する25%前後に達していること、当局が自国通貨を管理さえしていないことなどを考えると、スペインの債券が買われる理由はどこにも見当たらない。

 ウォール・ストリート・ジャーナルはこの不可解な現象の答えを「期待インフレ率」に求めている。債券の表面上の利回りを期待インフレ率で調整した実質利回りを計算すると、スペインとイタリアが他の主要先進国に比べて圧倒的に高い利回りとなるのだ。この方法に基づくと、実質利回りはスペインの10年債が2.25%、イタリア国債が2.22%であるのに対し、米国債は0.62%にすぎないと同誌は試算している。

 なぜ経済的合理性に乏しい水準まで南欧諸国の債券が買い進まれているのか。真実は買った本人でなければ分からない。うがった見方をすれば、ユーロ圏が「日本化」し、「中央銀行が買うから」という理由のもとに債券が買い進まれているのだとすれば、それは債券バブルの始まりかもしれない。(編集担:久保田雄城)