キウイの針状結晶と酵素の組み合わせで抜群の殺虫効果

2014年07月06日 11:31

 キウイを食べて口や舌に刺激を感じた経験を持つ人は多いだろう。イガイガした不快感や、場合によっては痛みを覚える人もいる。原因はキウイのタネの近くに多くある、シュウ酸カルシウムの針状結晶。0.1ミリほどの針が結晶となって集まっている。通常、針状結晶は粘膜に包まれて細胞の中に収められているため、そのままでは刺激を与えない。しかし噛み砕かれることよって細胞が壊され、剥きだしになった針が舌や口腔に刺激を与えるというわけだ。特にミキサーなどでピューレ状にした場合、細かく細胞が壊されて多くの針状結晶が出てくるために、より刺激を感じやすくなる。

 食べるにはやっかいなイガイガの元であるシュウ酸カルシウムの針状結晶に、新たな道が開かれようとしている。

 5月19日に茨城県つくば市の農業生物資源研究所は、シュウ酸カルシウムの針状結晶と、タンパク質を分解する酵素システインプロテアーゼをかけ合わせることで、高い殺虫効果を得ることができたと発表した。

 シュウ酸カルシウムの針状結晶はキウイ以外にも、パイナップル、サトイモ、ブドウ、アロエ、ランなどの植物に含まれている。これまでは針状結晶が害虫を寄せ付けない防御の役割を担うものと見られていたが、実際の防虫効果のほどは明確に掴めず、メカニズム解明までには至っていなかった。

 農業生物資源研究所はシュウ酸カルシウムの針状結晶を精製し、防虫効果のあるシステインプロテアーゼと一緒に葉に塗って、蛾の幼虫に食べさせた。その結果、1日後には身体が黒く変化して死亡することが確認された。どちらかひとつだけを塗布した場合には最高でも25%の致死率だったが、ふたつを合わせて塗ると、86%まで効果が上がることが分かった。針状結晶の針が害虫の細胞に穴をあけ、そこからシステインプロテアーゼが体内に入り込んで、殺虫作用を高くしているものと思われる。この発見が応用されれば、新しい農薬の開発となるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)