政府は内閣官房のHPで「集団的自衛権に関する閣議決定」を受けて、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題した一問一答形式による説明を国民や世界に向けて行っている。
ただ、回答は非常に簡単なものにふみとどまっていて、回答の根拠となる国民にとって、最も重要な部分が欠落しているため、回答をそのまま鵜呑みにできない危険性があることも否定できない。
例えば、問い10「徴兵制が採用され、若者が戦地へと送られるのではないか?」との問いに、政府は回答で「全くの誤解です。例えば、憲法第18条で『何人も(中略)その意に反する苦役に服させられない』と定められているなど、徴兵制は憲法上認められません」とのみの回答で終わらせている。
現行の憲法解釈の通説、あるいは政府の解釈が「徴兵制は苦役にあたるので、認められていない」と、説明して回答すべきだろう。ただ、それでも、今回のような、第9条(戦争の放棄)の解釈を政府・与党のみの合意で解釈変更することが容認されるとすれば、徴兵制度に基づく期限付き兵役は「苦役でなく、国民の義務」と解釈変更すれば、単純な話、徴兵制は憲法上認められないとする根拠を失うことになる。
徴兵は「専守防衛の下で、平和憲法下においても、自国の存立、国民の生命・安全を保持するため、万一に備えて国民が一定期間、訓練に参加する義務であり、苦役にあたらない」などと解釈変更されれば、どうなるか。政府回答には「憲法の精神に照らした整合性のとれた解釈変更」と言われかねない危険性が否定できない。
完全否定のためには、それを担保する措置、例えば「自衛隊員の確保は志願制を保持し、戦時法に基づく徴兵を除き、徴兵制をとることはできない。戦時法は戦争期間を除き、効力を有するものでない」という条項を自衛隊法に盛り込むなどだ。今回の憲法解釈の変更で、政府答弁への信頼性が低下したことによる客観的担保が必要といえよう。(編集担当:森高龍二)