慢性閉塞性肺疾患(COPD)による社会の負担額が年2,000億円

2014年07月10日 12:34

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)という病気をご存じだろうか。有害なガスや、微粒子を吸入することによって肺に炎症が生じ、せきや息切れなどの症状が慢性的に続く状態のことを言う。有害なガス、微粒子と言えば様々だが、一般的にあてはまるのは、そう、喫煙習慣によるたばこの害だ。重度になると、酸素供給のために鼻にチューブを通し、どこに行くにも常に酸素ボンベを持ち歩かなくてはならなくなる。進行性の病気であるため、徐々に肺の機能が失われ、最悪の場合には呼吸不全に陥るという。たばこ喫煙者の約2割が、COPDにかかるともいわれ、ヘビースモーカーの方はご注意されたい。

 COPDの患者で有名なのは、やはりヘビースモーカーだったとされるイギリス王のジョージ5世だが、近年、その患者数は増加傾向にあるらしい。世界保健機関(WHO)によると、2005年の慢性閉塞性肺疾患による死亡者は世界中で300万人にのぼり、また、患者数だけで見た場合には09年でおよそ2億人もいると推計された。WHOは、30年にはCOPDが世界の死亡原因の第3位になると予測している。

 厚生省の調べによると、日本国内での患者数は08年で22万人を越えたそうだ。12年の死亡者数は16,402人で、死亡原因の第9位に当たるという。日本医療政策機構は、COPDが、労働者の生産性を低下させることを予測し、13年にインターネット調査を実施した。その調査から算出されたのは、COPDが社会に対して与える経済的負担額である。同機構は、COPD患者の労働に当てられる時間の損失を割り出し、生産性損失額を推計。その額は496億円にのぼることが分かった。また、病気の治療などにかかる医療費の支出を1,584億円とし、合計で2,080億円が社会全体の負担となると発表した。実際に治療を受けるまでに至っていない潜在的な患者数を上乗せした場合、さらなる費用の増大が見込まれている。

 人口における高齢者の割合が増加するにつれて、COPDの患者数はますます上昇すると懸念されている。しかし現状でさえ、専門職による医療介入が不足している状態であり、日本医療政策機構は、適切な治療や体制を整備することを急務と捉え、COPD専門の医療従事者の育成を訴えている。もしもあなたが喫煙者なら、あなた自身の健康の為、そして社会の為に禁煙をしてはいかがだろうか。(編集担当:久保田雄城)