喫煙者に対する風当たりは日々強まるばかりだ。飲食店での全席禁煙はもはや当たり前。タバコを吸いながら楽しむのがごく普通の光景であったパチンコ店ですら、禁煙を売りにするホールが続々と開店している。
そんな中、ここ最近人気となっているのが電子タバコだ。電子タバコとはその名の通り電力によって駆動するタバコのことで、従来のタバコのように「葉」を燃やして出る煙を吸うのではなく、ニコチン等が含まれた溶液を熱し、そこから発生した蒸気を吸う物だ。リキッドと呼ばれるその溶液には通常のタバコの香りだけでなく、甘いチョコレートやコーヒーの香り、清涼感のあるメンソールの香りなど様々な種類がある。
電子タバコ市場は特に欧米で急成長している。市場調査会社のユーロモニターによると世界全体の電子タバコの市場規模は約35億ドル(約3500億円)で、その内5割を米国が占め、EU圏でも約10億ドル(約1000億円)に達する。一部では数年以内に1兆円規模へと成長し、2047年には従来のタバコ市場を上回るのではないかという見方もある程だ。
ところが最近、この電子タバコの使用について安全性に対するリスクがあることがわかってきた。愛用者から、呼吸器系の疾患や火傷、心臓血管障害といった健康被害が多数報告されているのだ。また、アメリカ食品医薬品局(FDA)の調査よると、一部の電子タバコには発ガン性物質が含まれている他、同じ種類のカートリッジでもその内容成分にかなりのバラつきがあるとのことだ。
品質管理がずさんであるとされた業者の商品については現在出荷を制限しているという。他にも、リキッドはカラフルで甘い匂いのする物も多いため、子供の誤飲事故も多発しているようだ。保管場所など、取り扱いにはかなりの慎重さが必要となる。
現在、日本で市販されているリキッドにはニコチンは含まれていないが、その気になれば海外製品を手軽に個人輸入できてしまう。また、上記のようにニコチン以外にも有毒な物質が含まれている可能性も否定できない。従来のタバコよりも健康に害悪なのであれば、電子タバコの存在価値には大きな疑問符がつくことになる。今後は関連の法規制も含め、より安全で安定した品質の電子タバコが求められるだろう。(編集担当:久保田雄城)