震災発生前の身体状態や生活習慣が発生後の精神的ストレスに影響 東北大が解明

2014年05月11日 18:41

東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野の門間陽樹助教、永富良一教授のグループらは、仙台市内の勤労者を対象に東日本大震災発生以前から行っていた健康調査のデータを解析することで、身体機能をはじめとする震災発生前の身体状態や生活習慣が、震災発生後の精神的ストレスと関連することを明らかにした。

 これまで災害時のメンタルヘルスを対象とした研究は災害発生後に調査が行われているのに対し、この研究により、災害発生前の状態が災害発生後の精神的ストレスに影響を与えること、さらに、日常の身体機能の維持・向上が災害時のメンタルヘルス悪化の一次予防策になる可能性が世界で初めて示されたという。

 大規模自然災害時には、心的外傷後ストレス障害(Posttraumaticstressdisorder:PTSD)が問題となることがよく知られている。これまで、自然災害によるPTSDの危険因子として被害状況や性別・精神疾患既往歴といった因子が特定されているが、これらの項目は災害が発生しないと評価できないもの、また、修正が困難もしくは不可能なものであるといえる。

 もし、災害の発生前に評価できる項目や修正可能な項目が災害後のPTSDに影響を与えることが明らかとなれば、災害発生前にPTSDハイリスク者を事前に把握でき、日常生活の改善・維持により災害に伴う精神的ストレスに対する耐性を得ることができる可能性が示されることとなる。

 そこで、同研究グループでは、災害の発生に影響を受けず、かつ、修正可能な身体機能や生活習慣に着目し、震災発生前の身体機能、生活習慣および既往歴などが、震災発生5ヶ月後の精神的ストレスレベルと関連が認められるかについて検討を行った。

 研究室が仙台市の勤労者を対象に東日本大震災発生以前から行ってきた健康調査のデータを用い、2010年に研究に同意した健診受診者1185名を対象に、アンケートによる生活習慣(喫煙習慣、飲酒習慣、身体活動量、食習慣、睡眠時間、歯磨き習慣)、人口統計学的特性(性別、年齢、職種、教育歴、婚姻状況、居住人数)、既往歴(糖尿病、高血圧、脂質異常症)および脚伸展パワーを評価した。さらに、震災が発生した2011 年に、震災による精神的ストレスの指標として改訂版出来事インパクト尺度(ImpactofEventScale-Revised:IES-R)の評価を行うとともに、震災による家屋被害、人的被害および仕事量の増減についてアンケートを実施した。

 分析対象者は、追跡不可能者や欠損値を除いた522名。分析の結果、男性においては、震災発生前の10年時に脚伸展パワーが高い人はIES-R得点は低い関連が認められ、また、毎日お酒を飲んでいた人および抑うつ傾向であった人は IES-R 得点が高い関連が認められた。

 女性においては、男性と同様に、10年時に抑うつ傾向があったものはIES-R 得点が高い関連が認められた一方で、高血圧であった場合もIES-R得点が高い関連が認められた。

 災害発生前に詳細な調査が行われていた研究は、世界的に見ても希有なものだという。なお、この研究は、文部科学省の広域仙台地域先進予防型健康社会仙台クラスター創成事業の一環として行われ、科研費・若手B(25750343)の助成を受けて行われた。(編集担当:慶尾六郎)