金融庁は検査結果を集計した2013年事務年度(13年7月~14年6月)の年次報告書を公表した。公表は初めてで、報告書の柱には(1)地銀の事業モデルの持続可能性、(2)投資信託の販売態勢、(3)コーポレートガバナンスの3つを据えた。この発表を受けて関係者の間で衝撃が走った。
以前より地銀再編の必要性は何度も唱えられてきた。金融危機時には、苦境に陥った下位行が上位の優良地銀に救済を求め再編が起こったが現在は状況が違う。アベノミクスの恩恵を受け、どこも好決算だ。表面上は安泰に見える地銀各行だが、水面下では再編に向けての噂が飛び交っているという。
金融庁は検査結果を集計した2013年事務年度(13年7月~14年6月)の年次報告書を公表した。公表は初めてで、報告書の柱には(1)地銀の事業モデルの持続可能性、(2)投資信託の販売態勢、(3)コーポレートガバナンス(企業統治)の3つを据えた。
関係者の間で衝撃が走った。地銀の中小企業融資の採算を点検したところ、貸出金利から調達・信用コスト、経費率を引いた実質収支は13年3月期でみると106行のうち30行前後がマイナスだったのだ。大企業や地方公共団体向けの融資や個人の住宅ローンも増えているが金利は低く、14年3月期の全体の貸出金利は4年前に比べ0.46%低下したという。地方銀行の中小企業向け融資は2割強が収支赤字となり「事業モデルは成立しなくなる可能性がある」と指摘したのだ。
金融庁は同時に人口減少に伴う地域金融への影響も調査した。将来、全都道府県で金融機関の貸出残高は減少する見通しだ。試算では貸出残高が20%以上減少する県もある。46の地銀が中期経営計画で貸出残高を増やす目標を立てており「持続可能性が低い」と指摘する。
これらを重ね合わせて見えてくるのは、「人口減少地域で貸出残高が減少している地銀は再編に飲み込まれる」ということだ。金融庁はこうした銀行を対象に再編を進めようとしている。麻生太郎財務・金融相も政府の経済財政諮問会議で地方銀行の再編を推進する提言があったことを踏まえ、地銀は「色々検討するのが正しい」と述べた。地方で人口が減っている点を指摘し「維持が難しい状況になるなら経営を考えないといけない」と業界再編に含みを持たせた。
銀行という巨大で保守的な組織が自らの手で再編を進め、収益性を高めていくことが可能なのだろうか。体力が残されている今こそ、将来を見据え自らの手で将来を切り拓いていく必要がある。さもなければ、不毛な金利引き下げ競争の果てに、地方銀行の事業モデルは本当に破綻することになる。(編集担当:久保田雄城)