帝国データバンクは、国内主要112行の2013年3月末および14年3月末時点の預金残高、貸出金残高、預金利息(支出)、貸出金利息(収入)の推移について調査・分析し公表した。
預金残高が微増となるなか、各種預金金利の低迷が続いたことで、預金利息負担が大きく軽減された結果となった。一方、貸出については、大手企業を中心としたアベノミクス効果が徐々に浸透するなか、設備投資の回復、消費増税前の住宅ローンの需要増などから貸出金は増加したものの、やはり金利低迷が響き収益性が低下する結果になった。金利の低迷状態が続くなか、預金利息を減少させてはいるが、融資先の開拓、金利交渉など、資金運用が思い通りに進んでいない現状がうかがえる。
今後、さらに深刻化する少子・高齢化社会を背景に、地方の若年層の都市部への就学・就職や高齢者の駅近マンション購入といった動きに伴う人口流入から、都市部を営業拠点とする金融機関の預金は、今後も増加・横ばいの推移が予想される。一方、地方では若年層の流出から高齢者比率が高まる地域の増加が予想されるとともに、定期的に振り込まれる年金が預金を左右する要素が高くなってくるが、都市部、地方の共通課題となるのは、融資先の発掘・開拓となる。
金融庁は昨年9月に新しい検査・監督方針で地域金融機関のビジネスモデルの持続性も検証するとし、「必要に応じて経営陣と議論する」と明示。同時に年末に将来の地域金融機関の収益分析表を示した。この表は森信親検査局長の肝いりで作られたことから、「森ペーパー」と呼ばれ、地銀業界では再編の対象行をめぐり憶測が飛び交っている。
「オーバーバンキングで過当競争になっている」と見て金融庁は地域金融機関の再編を促している。麻生太郎財務・金融相も5月20日、政府の経済財政諮問会議で地方銀行の再編を推進する提言があったことを踏まえ、地銀は「色々検討するのが正しい」と述べた。地方で人口が減っている点を指摘し「維持が難しい状況になるなら経営を考えないといけない」と業界再編に含みを持たせた。
今後、政府主導で金融機関再編機運が一段と高まりそうだ。各行は少しでも有利に再編を乗り切ろうと躍起になっている。バブル崩壊後、メガバンクを中心に日本の銀行業界に大きな再編の波が訪れた。次にやってくる再編の波に各行はどのように対応するのだろう。(編集担当:久保田雄城)