三菱電機<6503>は家庭用の電力変換装置「SMART V2H」を発表した。7月31日に発売予定だ。この装置を使用すれば、電力会社から購入する商用電力と設置した太陽光発電システムから得られる電力、電気自動車から得られる電力を日常だけでなく停電時にも意識せずに「混ぜて」利用することが可能になる。価格は95万円とまだまだ高いものの一般家庭でも購入できるレベルであり、これにより太陽光発電によって得られる電力の効率的な利用が進みそうだ。
製品名に含まれる「V2H」とはVehicle to Home(車両から家庭へ)の略で、電気自動車やプラグインハイブリッド車の蓄電池のエネルギーを家庭用電力として利用することだ。電力の供給が不安定であるという太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの弱点と、一日の中で波のある電力消費の性質によって、再生可能エネルギーによる電力の供給は必ずしも需要とマッチしていないのが現実だ。この需要と供給のギャップを、電気自動車などの蓄電池を用いて調整しようというのがこの「V2H」の考え方である。
これまでのV2Hシステムでは、電気自動車から家庭に電力を提供する際には商用電力を遮断していたため、電気自動車の蓄電電力と太陽光発電システムから得られる電力、商用電力を同時に使用することはできなかった。今回販売されるSMART V2Hはこの3つの電力を混ぜて使うことができる上、3つの電力をモニターして自動で最適制御する「電力需給制御システム」が搭載されており、例えば太陽光発電の発電電力量が多い好天時には太陽光発電による電力を使い悪天候時には電気自動車から電力を使うなど効率的な電力の使用が可能となる。
再生可能エネルギーで発電された電気を地域の電力会社が一定の価格で買い取ることを国が約束した「固定価格買取制度」は今年で導入されてから2年を迎えるが、なかなか利用は進んでおらず、いわゆる「太陽光発電ブーム」も終息しつつあると言われている。SMART V2Hのような製品が出現することで、再生可能エネルギー利用の機運が再び高まることを期待したい。再生可能エネルギーのより効率的な利用のため、このような技術が次々製品化されることは喜ぶべきことだろう。(編集担当:久保田雄城)