今年3月にオープンしたライカ京都店には度肝を抜かれる。築100年の2階建て町屋建築を、当時の構造をそのままに梁や柱など使える木材を活かして匠の技で再生させ、そこにライカの世界観をマリアージュしている。
ライカカメラ社(Leica Camera AG、本社:ドイツ・ウェッツラー、以下ライカ)は、1914年に初めての35mm判カメラ「ウル・ライカ」を開発し、今年100周年を迎えることを記念して、特別限定エディション「ライカM 100 years」を発売すると発表した。レンジファインダー式デジタルカメラ「ライカM」のトップカバーに、ライカフォトグラフィー100周年記念の特別なロゴのエングレーブが施された「ライカM 100years」は、シルバークロームボディとブラックペイントボディの2色展開で、世界限定500台の販売だ。
デジタルカメラの時代になり、持ち前のデジタル処理技術を武器に日本製のカメラが世界のライバルを圧倒してきた。画素数でも画像処理技術でもライバルの追随を許さなかった。しかし、いたずらにスペックを追求するメーカーの姿勢に違和感を感じていたのが、マニアと呼ばれる愛好家たちだ。ハイスペックなデジタルカメラが吐き出す、高い解像度の写真や、暗所での高感度性能に感嘆の声を上げつつも、彼らは果てしないスペック追求の競争に辟易し始めていたのだ。
ライカとしてはそんなことは百も承知だったのだろう。独ライカカメラの日本法人、ライカカメラジャパンは3月15日に京都・祇園にライカ京都店を開店させた。新店舗は京都市東山区の花見小路通沿いに立地する。2階建てで延べ床面積は約240平方メートル。柱や梁、テーブルの一部は、お茶屋時代のものをそのまま使った。築100年のお茶屋を改装した店舗は坪庭に面したスタジオを畳敷きにするなど、和の風情を演出している。日本のメーカーでは考えられない演出だ。
ライカMに話を戻す。このカメラは、新開発の有効2400万画素CMOSセンサーを搭載。一方、7月17日に発売されたニコン<7731>のD810 は3635万画素のセンサーを搭載している。スペックだけなら到底日本製のデジタルカメラにかなわない。それでも、多くの人がライカに憧れる。ロバート・キャパや木村伊兵衛といった著名な写真家もライカを愛した。そんなライカの世界限定500台の100周年モデル。間違いなく、即完売となるだろう。ライカの魅力はスペックではない。デジタルになっても変わらないドイツ気質だ。(編集担当:久保田雄城)