変革が求められるデジタルカメラの未来

2014年01月07日 07:32

EN0202_061

携帯電話機やスマートフォンの登場とカメラ機能の進歩によって、デジタルカメラ市場は大きなダメージを受けているかもしれない。

 スマートフォンの高機能化はユーザーにとっては有り難い話だが、カメラ業界にとっては思わぬ死活問題に発展しつつあるようだ。2013年末の商戦では、パナソニック<6752>やソニー<6758>などの国内のデジタルカメラメーカーはこぞって、ミラーレス一眼の新モデルを市場に投入したが、この背景には取りも直さず、スマートフォンに内蔵されたカメラ機能の性能が飛躍的に向上したために、コンパクト型デジタルカメラ、いわゆるコンデジの市場が急激に圧迫されているからに他ならない。

 コンデジへの対応は各社微妙に異なるが、とくに低価格帯のコンデジに関しては各社ともに縮小傾向にあるとみられている。最も早く撤退を決めたのはオリンパス<7733>で、13年5月に2万円以下の低価格帯コンパクトデジカメの開発を中止することを表明した。同社ではさらに一眼レフカメラについても同様に開発を中止し、経営資源をミラーレスに集中することも明らかにしている。また、パナソニックや富士フイルムも低価格のコンパクトデジカメの開発縮小を検討しており、こちらもやはり、今後はミラーレスに比重を置いて、スマホカメラとの差別化を図り、高画質・高倍率ズームのモデルなどに力を注いでいく構えのようだ。

 当初は、「コンデジ以上、一眼レフ未満」と揶揄されたミラーレス一眼だったが、最近では一眼レフに見劣る要素はほとんど見当たらない。もちろん、価格によるスペックの差はあるが、それは一眼レフ同士でも同じこと。ミラーレス一眼の魅力は、コンデジ並みのコンパクトボディでありながら、一眼レフ並みのイメージセンサを兼ね備えていることだが、このイメージセンサの性能がここ数年で格段に進歩しているのだ。その最上位機種にあたるのが、ソニーが13年11月に発売した「α7R」。ソニーは一眼レフの高級モデルにしか使われなかった大型画像センサーを搭載し、35mmフルサイズ相当(35.9×24mm)有効約3,640万画素の光学ローパスフィルターレスCMOSセンサーを採用することで、一眼レフの購入層も視野に入れている。

 また、2008年10月に業界で初めてミラーレス一眼「パナソニック・ルミックスDMC-G1」を開発した、ミラーレス一眼のパイオニアでもあるパナソニックも、レンズ交換式では世界最小の幅98・5ミリ、奥行き30・4ミリを実現した「LUMIX GM」を年末商戦に合わせて11月に発売した。コンパクトなボディに高性能センサーと高いオートフォーカス機能を搭載した同機は、CMのイメージキャラクターに女性にも人気の女優、綾瀬はるかを起用するなど、どちらかといえばターゲットを女性寄りにした戦略をとっているように思われる。また、Wi-Fi接続機能も搭載しているので、スマートフォンや対応プリンタへの写真の転送も可能となっている。

 確かに、携帯電話機やスマートフォンの登場とカメラ機能の進歩によって、デジタルカメラ市場は大きなダメージを受けているかもしれない。しかし、逆に考えると、それらのお陰で、写真を撮ることが一般人にも身近なものとなったのも事実だ。さらに近頃はFacebookなどのSNSやブログなど、インターネットのメディアで写真利用する機会も増えている。人目につくようになると、単純に画素数などの問題ではなく、美しいボケ味とか、より美しい写真を撮ってアップしたくなるのが人情だ。スマホカメラが入り口となって、カメラへの興味も喚起されるだろう。互いにパイの食い合いをするではなく、デジカメとスマホが共存・共生する道もあるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)