エボラ出血熱感染拡大 日本は大丈夫か? 各国の状況と対応は?

2014年08月09日 07:24

EBOLA GUECKEDOU CONAKRY GUINEA 2014

国境なき医師団(MSF)日本では、エボラ出血熱対策のため、使途を指定した寄付の募集を行っている。日本国内での報道の少なさから不安を感じている方も多いと思うが、私たちが今できることは、正しい情報を手に入れることと、医師団への寄付などではないだろうか。

 西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3ヶ国で、エボラ出血熱が過去最大規模で感染拡大している。世界保健機関(WHO)によると、今回のエボラ出血熱による死者は8月1日時点で887人に達したという。

 エボラ出血熱は、エボラウイルスが引き起こす発熱や出血を伴う感染症で、極めて致死率が高い。基本的に空気感染はせず、血液や唾液などの体液からの感染、または体や組織への直接接触によって感染すると言われている。潜伏期間は2~21日(通常は7日前後)、現在ワクチンはなく、治療は対症療法しかない。

 今回のエボラ出血熱は、今年3月にギニアの首都コナクリで確認され、今も感染が広がっている。拡大の理由には、都市部で感染が始まったこと、これまでのエボラ出血熱よりも致死率が低い一方で潜伏期間が長いため感染拡大しやすいこと、そして、現地住民のエボラ出血熱に関する知識の不足などが挙げられている。現地では葬儀で遺体に触れる風習があり、こうしたことも感染につながっている。

 現在、ギニアでは感染数が減ってきているようだが、リベリアとシエラレオネでは拡大が続いている。リベリアは7月の時点で国境を封鎖。感染者の遺体の埋葬場所を限定したり、感染地域への移動制限など対策を行っている。シエラレオネも8月に非常事態宣言を出し、感染地域の隔離政策などを進めている。

 アメリカやEU各国も非常事態宣言を出し、飛行機などでの世界への感染を防ぐため、当事国への不必要な渡航を控えるよう呼びかけている。これを受け、英ブリティッシュ・エアウェイズは8月5日、リベリアとシエラレオネへの運航停止を発表した。日本を含め他の国も、不必要な渡航を控えるよう呼びかけている。渡航の全面禁止などの措置は、当事国への救援活動などを考えると取れないという側面もあるだろう。

 3ヶ国以外の感染者では、ナイジェリアで1人が死亡、他にはリベリアで活動していたアメリカ人3人の感染が確認された。アメリカ人の内1人は死亡、2人は本国に輸送され治療を受けている。隔離されたアトランタの病院で治療を受け、症状は改善しているとのことだ。

 現地で治療に当たった医療従事者は会見を行い、「正しい知識を現地住民に伝えたいが、医師や看護団が圧倒的に足りない。現地医療従事者を増やし、防護服などの医療従事者への感染を防ぐ備品・設備を充実させなければ感染拡大は防げない。そのためには国際社会の協力が必要だ」と訴えている。事実、リベリアでは医療従事者への感染拡大から病院の閉鎖が相次いでいる状態だ。

 日本国内では隔離治療は可能だが、原因特定などの対応ができる研究施設は2つしかない。そしてそのいずれも近隣住民らの反対から、バイオセーフティレベル4のエボラ出血熱には対応できなくなっている。万一日本で感染者が確認された場合、現状では独自の対応や研究はできない。終息を祈りながら、今後も状況を見守りたい。(編集担当:久保田雄城)