日興アセットマネジメントは最近の新規設定ファンドの傾向として、「これまでになかった資産を投資対象とするファンドの開発が進んでいる」と分析している。米国のパイプラインやエネルギー施設に投資する共同投資事業体(MLP)や、優先REIT証券、そして米国の中堅企業向けローンに投資する組織体(BDC)、いわゆるバンクローンファンドなどだ。とりわけ金利上昇に備える資産としてバンクローンファンドに対する関心が高まっている。
資金調達を行いたい企業は銀行から融資を受ける。銀行は融資を行う代わりに元本返済のほか、利子を受け取ることができる。その権利(貸付債権)を銀行は転売することがある。このようにして、市場で取引されるようになった融資はバンクローンと呼ばれる。米国のバンクローン市場は規模が大きく、時価総額は70兆円以上といわれる。これは米国のREIT市場の約50兆円を上回る規模だ。
一般にバンクローンで資金調達を行う企業は相対的に格付けが低い傾向がある。バンクローンは信用力が低い分、高い利回りが魅力だ。投資家はバンクローンに投資することで、利子収入のほかにバンクローン自体の売買によって利益を上げることもできる。
バンクローンが注目される最大の特徴は、金利上昇に強い「変動金利」の資産という点だ。市場金利が動くことで投資家が受け取る利子も変わることになる。「優先担保」が設定されている点も特徴で、万一の債務不履行の際には他の投資家よりも優先的に資金回収を行うことができる。したがってバンクローンは相対的にリスクが小さく、安定的な利子収入が期待できるのだ。
しかし、金利の上昇により受け取る金利が増えても、そのような状況では一般的にバンクローンのような債権の価格は下落すると考えられる。そもそも本当に金利が上昇するかどうかも分からない。その時、市場がどんな反応を示すのかも分からない。優先担保が設定されていても、債務超過で企業が破綻した場合に本当に回収できるのかも分からない。なにしろ、もともと格付けの低い会社の債権なのだ。さらに、デリバティブの仕組みを利用し新興国通貨で運用するバンクローンファンドもある。「屋上屋を架す」複雑な仕組みのファンドが必ずしも高いパフォーマンスを得られるとは限らない。自身が何に投資しているのか分からなくなってしまうファンドが本当に優れたファンドなのか疑問が残るのは筆者だけではないだろう。(編集担当:久保田雄城)