成田空港がバードストライク対策に鷹匠を起用

2014年08月23日 13:16

 日本には様々な伝統的な仕事が存在するが、中でも異彩を放つのが「鷹匠」だ。鷹匠とは、鷹を使った狩「放鷹」に使う鷹の飼育・訓練を担当する技術者のことで、江戸時代には、軍陣の演習や民情視察の目的でも放鷹が頻繁に行われたことから、幕府や諸藩の役職の一つであったという。徳川三代将軍・徳川家光や八代将軍・吉宗の時代に最も盛んだったといわれ、鷹匠役所が置かれたり、放鷹に関する法律まであったという。さらには、鷹はもともと朝廷からの御預物だったので、将軍でさえも「御鷹」とよんで敬うほど、丁寧に扱われていたそうだ。

 時は移り、現代でも鷹匠は残っている。もちろん、今はもう政府の御用達ではないものの、意外なところで需要が起こっている。成田国際空港株式会社は8月11日から17日までの期間、鳥が飛行機に衝突するバードストライクの防止策として、鷹でツバメやスズメ、ヒバリなどの野鳥を追い払う実験を始めた。実験が行われたのは、B滑走路の北側エリア周辺の管理道路と東側にある防音堤の林。4人の鷹匠が2羽の鷹を連れて歩いただけで、明らかに野鳥が減少している効果が見られたという。

 バードストライクとは、鳥が離陸直後や着陸直前の航空機に空中で衝突するトラブルのことで、酷い場合は航空機を損傷することもあり、エンジンに巻き込まれてしまうと停止する恐れもあるため、滑走路を閉鎖して確認したり、飛行計画の変更や離陸中止といった実害がもたらされることもある。

 国土交通省の調査によると、日本国内でのバードストライク被害が最も多いのは羽田空港で、年間約200件。海が近く水鳥が多いことが原因と見られている。成田空港は福岡空港に次いで全国で3番目に多い。しかも、ここ10年で被害件数が6倍以上に急増しているという。

 原因と見られているのは、自然が豊かなB滑走路。実際、02年にB滑走路の使用が開始されてから被害が増え始め、09年に延伸するとさらにバードストライクの報告件数は増えている。成田空港では、この事態を深刻に受け止め、2年前から、1日に5回程度、猟銃を持った職員が滑走路周辺を巡回して、空砲の威嚇発砲を行うなどの駆除活動を行っているものの、残念ながら効果は限定的だという。国土交通省では、今回の実験で一定の効果が確認できれば本格導入も検討するとしている。

 野鳥が多いということは、それだけ空港周辺に自然が残っているということでもあるが、モノが飛行機だけに、ヘタをすると人命にも関わる大惨事を招きかねない。とくに今後、2020年の東京オリンピックも控え、成田は日本の空の玄関口となる空港だ。世界一安全で快適な空港であることを世界にアピールするためにも、御鷹と鷹匠の活躍に期待したいものだ。(編集担当:藤原伊織)