2015年1月から相続増税まで残された時間は僅かだ。生保各社は相続税対策に悩む富裕層向けに相談体制の強化や関連商品の拡充に動いている。しかし、節税テクニックを論じる前に、相続に備え家族間で思いを共有することが何より大切だ。
2015年1月から相続税の計算方法が変わる。現行の非課税枠は4割ほど縮小する。最高税率も50%から55%に上がる。納税者にとっては頭の痛い話だが、増税特需に沸く業界がある。相続増税に備え、生命保険の商品を使って子や孫に財産を移す高齢者が増えている。生保大手4社は13年度に計300億円以上の生前贈与マネーを集めた。増税まで残された時間は僅かだ。各社は相続税対策に悩む富裕層向けに相談体制の強化や関連商品の拡充に動いている。
生前贈与向けの保険商品は、親から子・孫へ贈与税の基礎控除(110万円)分の現金を毎年贈与し、そのお金を使って生命保険に加入するのが基本的な仕組みだ。それ自体は簡単な仕組みで何ら特別なものではない。生前に親世代の財産をできるだけ移しておけば、将来の相続税負担を減らせる。贈与税をかけずに子や孫に資産を移せる。ただそれだけの仕組みだ。
「自分で子ども名義の預金口座に資金を移せば良いのでは無いか。」そう考える人も当然いるだろう。その通りだ。実際にこうした節税は以前から存在していたし、多くの人が利用してきた。なぜ生命保険の必要があるのか。保険会社のセールストークはこうだ。「子ども名義の銀行口座に現金で貯金する場合、親が管理しているとみなされると相続税が課税されるケースがあるが、生命保険ではその心配がない。」、「贈る側から見ると、保険が満期を迎えるまで贈ったお金が無駄遣いされにくい特長もある。」
11年に国税通則法が改正され、税務調査の手続きが煩雑化したことを受け税務調査の件数そのものは減少している。しかし、高い確率で申告漏れが見つかる相続税に対しては、これまで以上に税務署のチェックが厳しくなっている。税務調査とは、納税者が提出した申告書の内容に誤りがないか、帳簿などを調べて確認することだ。納税者の同意なしに帳簿などを調べることはできないが、国税調査官には「質問検査権」という強い権限が与えられ、求められた書類の提出を拒んだり、嘘をついた場合には、懲役や罰金が科されることもある。
こうした話を聞けば、奨められるままに保険を契約してしまいそうになる。しかし、その商品内容やメリット、デメリットを正しく理解する必要がある。相続発生時には被相続人はこの世にいない。節税テクニックを論じる前に、相続に備え家族間で思いを共有することが何より大切だ。(編集担当:久保田雄城)