賃貸住宅建設急増 その相続税対策に潜むリスクとは?

2014年07月06日 20:16

 日本経済新聞によると住宅市場で賃貸物件の建設が急増しているという。4月の住宅着工件数は持ち家、分譲住宅が消費増税の影響で前年比減少しているにもかかわらず、賃貸住宅は14か月連続で増加している。都市部の地価持ち直しで投資マネーが流入しているほか、相続税増税を控えた個人の節税投資が増えている。

 相続税は2015年1月から基礎控除額が4割減って課税範囲が広がり、最高税率も引き上げられる。相続税の対象となるのは年5万人強から1.5倍程度に増えるという見通しもある。みずほ総合研究所は、相続税対策で賃貸住宅の着工件数が年1万5000戸押し上げられるとみている。

 なぜ、相続税対策に賃貸住宅建設が有効なのだろう。遺産が賃貸住宅の場合は入居者の借地権や借家権が資産評価から差し引かれる。同研究所の試算では2億円の資産を相続した場合、賃貸住宅が相続財産であれば納税額は1220万円と現預金の4分の1ですむという。金融機関から融資を受けて建物を建設すればさらに節税の効果は大きくなる。

 個人が賃貸住宅を建設するのは大きな投資だ。にもかかわらず、相続税対策を重視するあまりリスクに対して鈍感になりがちだ。賃貸物件が老朽化すれば、空室率は上昇し賃料を下げざるを得なくなる。また、大規模修繕費も必要になる。

 不動産会社の提案書にはこうしたリスクが十分に織り込まれていないことも多い。「家賃保証」を売りにする建設会社もあるが、新築時の家賃がずっと保障されるわけではない。多くの場合は、オーナーに支払う家賃を減額できる条項が契約に盛り込まれており、空室が多い物件は家賃の引き下げを受け入れざるを得なくなる。
 
 もともと相続税対策が目的で、収益力を無視して建てられた物件は年とともに競争力が低下し借入金の返済すら困難になり破綻するケースもある。こうなっては相続税対策どころではない。節税目的であっても、物件の競争力を冷静に見極める必要がある。

 郊外へ行くと、賃貸住宅にする必要があったのかと疑問を抱かざるを得ない物件もたくさんある。農地であれば固定資産税も安い。農地のまま相続すれば相続税が免除されるケースもある。こうした様々なことを考えて相続税対策は慎重に対処すえうべきではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)