路線価上昇で三重苦 相続税・売却益も増税

2014年07月17日 08:30

路線価上昇で三重苦 相続税・売却益も増税

金融緩和で投資資金が集まる都心で再開発が続くなど都市部の地価は上昇に転じている。しかし、固定資産税、贈与税、相続税、所得税と土地に絡む税金もそれに伴い増税となり、土地を持つ人は複雑な思いだ。

 ついに増税の波がここまで押し寄せてきた。国税庁は7月1日、2014年分の路線価(1月1日時点)を公表した。全国平均は前年より0・7%下落したものの、下げ幅は縮小。金融緩和で投資資金が集まる都心で再開発が続くなど、リーマン・ショック前の08年以来6年ぶりに東京、大阪、愛知がそろって上昇した。東日本大震災後、住宅需要が高まる福島でも22年ぶりに上昇に転じた。

 メディアはこのニュースを景気が順調に回復している具体例として好意的に報道しているが、すべての人がこのニュースを喜んで受け入れているわけではない。都市部に土地を保有する人にとっては増税につながるからだ。毎年の固定資産税は勿論のこと、15年からの相続税増税で都市部に自宅を持つ層で新たに税負担をする人が大きく増える可能性がある。贈与や売却の場合も地価の上昇は増税となる。土地の売却時の譲渡所得にも影響が出るだろう。土地を持っていても、相続や贈与を行っても、売却しても増税になれば、まさに三重苦だ。

 ところで、土地には5つの価格が存在する。公示価格、基準地標準価格、相続税路線価、固定資産税評価額、これら4つの公的価格と実勢価格だ。このため、土地の価格は「一物五価」などと言われる。

 公示価格は国土交通省により毎年1月1日を基準日とし3月下旬に発表され土地売買の目安となる。基準地価は都道府県により、公示価格を補う目的で毎年7月1日を基準日とし9月下旬に発表される。今回発表された路線価は各国税局が毎年1月1日を判定の基準日として評価するもので、公示価格の80%相当を評価水準としている。固定資産税評価額は、固定資産課税台帳に登録された価格で3年に1度評価替えが行われ、前年の公示価格の70%相当が評価水準とされる。

 相続税増税を前に相続税に対する関心が高まっている。ある税理士法人の試算によると、東京国税局管内(東京、神奈川、千葉、山梨)で15年1月以降に相続税を納税することになる人は年間約3万4700人。改正前の約1万6100人から2倍強に増えるとのことだ。しかし、基準地価の上昇により相続税は一層身近なものとなりそうだ。(編集担当:久保田雄城)