軽自動車は増殖中だが、初のハイブリッド車とはならず。ワゴンRが大規模マイチェンを急いだ理由

2014年08月28日 12:18

Wagon_R

写真はエネチャージの進化板「S-エネチャージ」が搭載された新型「ワゴンR FZ」、価格は137万2680円(FF車)だ。車体色は新色のクリスタルホワイトパール「S-エネチャージ」搭載車はワゴンRスティングレーにもラインアップする。

 スズキは同社主力の軽自動車「ワゴンR」にモーターで駆動をアシストする新しい燃費改善メカニズムを搭載。消費者に人気のある軽トールワゴン系で軽自動車最高の燃費を達成した。近年のガソリン高もあり、軽自動車の需要は底堅い。価格を従来モデルとほぼ同水準に抑え、スズキは販売攻勢をかける構えだ。しかし、発表前に噂されていた、「軽自動車初のハイブリッド車(HV)」とはならなかったことで、一部に失望の声も上がっている。

 新型ワゴンRには、スズキ独自の省エネ技術であるエネチャージの進化板「S-エネチャージ」が搭載され、改良型エンジンと協調することで軽トールワゴンクラストップのJC08モード32.4km/リッターの好燃費を達成した。

 加えて、エネチャージの進化に合わせてアイドリングストップも進化を果たした。具体的には、いったんアイドリングストップをしてから再度アイドリングストップができるようになるための条件「再アイドリングストップ」のレベルを下げ、アイドリングストップ頻度を増やしているという。スズキによると、今回のモデルでは時速13km/h以下でエンジンを自動停止させるアイドリングストップを採用。速度条件を下げアイドリングストップ頻度を増やすことで燃費向上に貢献するという。

 アイドリングストップ機構搭載車両を運転するとよくあることだが、足が少しでもブレーキペダルから離れてしまっただけでアイドリングストップが解除されてしまうことが多い。新型ワゴンRにはブレーキストロークセンサーを装備することで、ペダルの操作量を検出し、意図しないエンジンの再始動を抑制しているのもポイントだ。

 全国軽自動車協会連合会(軽自協)の発表によれば、軽自動車の普及台数(100世帯あたり)の全国平均が、2013年12月末の時点で13年3月末に行なわれた前回の調査よりも、1.1台増えて52.9台となり、過去最高を更新したことがわかった。

 今回、スズキはデビュー後2年を待たずしてワゴンRを大規模なマイナーチェンジした。が、そこには「軽自動車メーカートップの座をダイハツに奪われ」、今年になってからも「車名別軽自動車販売統計1-7月累計(軽自協)で4位」と低迷。しかも、ダイハツ・タントには累計で5万台ほどの差を付けられている。加えて、消費増税後の4-7月では、ダイハツ・タント、日産デイズ、ホンダN-BOXの後塵を拝するのみならず、ホンダN-WGNにも抜かれた。このままでは、2014年の「軽自動車四天王」の座にスズキのクルマがランクインしない可能性がある。スズキがワゴンRに未完の「軽初のハイブリッド」ではなく、取り敢えず「S-エネチャージ」搭載を決めたのは、そんな焦りの現れのようだ。

 来春4月からの軽自動車税の引き上げ前の駆け込み需要を見据え、競合他社も新モデルを相次ぎ投入しており競争が激しくなっている。消費増税以降、販売台数でライバルに水を開けられ低迷するワゴンR、顔付きはミニバンのトレンド「強面」になり、今回の省燃費「テコ入れ策」は“吉”と出るか?(編集担当:吉田恒)