“HVかミニバン、軽自動車しか売れない”新車販売に、どんな変化が起きたのか?

2014年08月09日 19:43

Honda_Fit

2014年7月、新車販売ベスト3はいずれもHVおよびHVをラインアップする。トヨタHV2車が前年割れのなか、前年比144.0%を記録する「ホンダ・フィット」

 日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)が7月の新車販売統計を発表した。

 それによると、4月の消費増税以降の販売落ち込みは、おおむね解消に向かっていると思われる。ただし、新車販売の1-6月累計と7月単月の販売ランキングには微妙な違いが表れている。

 登録車ベスト3は、日本を代表するハイブリッド車(HV)が1位から順に「トヨタ・アクア(2万3909台/前年比83.4%)」「トヨタ・プリウス(1万6865台/同73.1%)」「ホンダ・フィット(1万6636台/同144.0%)で、1-6月累計の傾向と大きな違いはない。が、本年1年間の累計を予想すると、前年割れを繰り返すトヨタ製HVモデルの古さは否めない。モデル末期といわれる2009年デビューのプリウス、2011年デビューのアクアに比べて、昨年登場したフィットには、いまだに新鮮味がある。

 ただし、トヨタの強みは、アクアから廉価ミニバン、高級セダン、クラウンやレクサスに至るHVフルラインアップにある。

 登録車7月ランキングの4位には、満を持してHV化した5ナンバーのミニバン「ヴォクシー(1万2704台/同292.7%)」が入り、兄弟車の「ノア(6784台/同201.5%)と合わせると1万9488台に達する。これまで6年間にわたってこのカテゴリーでトップに立ってきた「日産セレナ(6591台/同73.2%・7月ランキング10位)」を、いとも簡単に抜き去った。

 同じようにSUVの分野でも大きな変化が現れている。昨年までクリーンディーゼル搭載で快走していた「マツダCX-5(2093台/同61.4%)」を昨年末にファンの熱い声に応えて復活した「トヨタ・ハリアー(5205台)」が蹴り落としたと思った隙に、「ホンダ・ヴェゼル(11567台・7月ランキング6位)」が大躍進を見せている。

 これらのランキング変化の要因はすべてのカテゴリーでHVが登場してきたことによる。ミニバンのノア&ヴォクシー、SUVのハリアーとヴェゼルしかりである。純粋な国産セダンとしてトップの16位となった「トヨタ・クラウン(3543台/同52.7%)も半数以上がHVだ。ちなみに、登録車ベスト30にランクインする唯一の国産セダンがクラウンである。

 軽自動車に目を移すと、ここでも販売傾向に変化の兆しがある。これまで、「ダイハツ・タント(1万7044台/同158.8%・7月軽自動車ランキング1位)や「日産デイズ(1万4832台/115.0%・7月軽自動車ランキング2位)」、「ホンダN-BOX(1万4633台/104.2%・7月軽自動車ランキング3位)などの実用的で室内が広いトール系ワゴンが席捲してきた。

 そこに割って入ってきたのが、往年のオフロードバイクの名を譲り受けた、“楽しいSUV系の軽”を標榜する「スズキ・ハスラー(1万4006台・7月軽自動車ランキング4位)」だ。同社の量販車種であるトールワゴンの「スズキ・ワゴンR」や「スペーシア」を出し抜き、同社ナンバーワン車種に躍り出た。

 また、軽自動車2座オープンの「ダイハツ・コペン(1327台・7月軽自動車ランキング15位)」も発売直後にも拘わらず健闘している。実用性を追求してきた軽自動車にも「ホンダN-ONE」が提案した「所有する愉しさ」や「運転する楽しさ」に加えて、「スポーツ」、あるいは「優雅な」個性を求め始めたということか?

 登録車と軽自動車の乗用車総合で見ると、ベスト10には5車種がHVおよびHVをラインアップする登録車で、4車種が軽自動車だ。残る1車種はトヨタのグローバルコンパクト「トヨタ・ヴィッツ(1万1891台・7月ランキング5位)」である。相変わらず、“日本ではHVかミニバン、軽自動車しか売れない”傾向は変わらないものの、「ホンダ・ヴェゼル」や「スズキ・ハスラー」「ダイハツ・コペン」の売れ行きは、これまでとは異なるベクトルを感じさせる。(編集担当:吉田恒)