【今週の展望】秋風に乗って先物主導の値動きが帰ってくるか

2014年08月31日 20:11

 今週は日銀も含めて各国中央銀行の定例会合ラッシュ。2日にオーストラリア準備銀行が理事会を開いて政策金利を発表する。3日はカナダ、ブラジルの中央銀行が政策金利を発表。アメリカでは「ベージュブック」(地区連銀経済報告)が公表される。3~4日はイングランド銀行(BOE)が金融政策委員会を開き、4日に政策金利を発表する。4日にECB(欧州中央銀行)の定例理事会が開かれ、政策金利を発表した後、ドラギ総裁が記者会見を行う。4~5日に英国ウェールズのカーディフで開かれるNATO首脳会議にウクライナのポロシェンコ大統領が出席するがロシアは今のところ不参加の予定。

 アメリカ主要企業の決算は、3日にトール・ブラザーズが発表する。

 いつもは怖い「鬼」も、いなければいないでどこか寂しさを感じて、憎さ余ってかわいさ百倍。前週はそんな週だった。鬼とは海外の機関投資家、特に指数先物や日経平均採用225種など主力大型株のトレードで東京市場の鼻面を取って引っかき回してきた勢力のこと。それが夏の終わり、アメリカのレイバー・デー休暇にお付き合いしたのかお休みモードに入っていた。前週は「鬼の居ぬ間の洗濯」なのか、主力銘柄にとって代わって小型株、東証2部、新興市場など「株式市場のマージナル(辺境)」で人知れず秘かに咲いていた銘柄が一躍、脚光を浴びていた。

 昨年7月に旧・大阪第2部、新2部の銘柄が大挙引っ越してきて、その中の「浪速から上京してきたおもろいで銘柄」がポツポツと注目された程度で、あとは「ドングリの背比べ」視されろくに研究対象にもされずに放置される銘柄が大半だった東証2部だが、東証2部指数が8月13日から思わず目を疑うような13連騰継続中。一躍「モテ期到来」になった銘柄が続出している。それはそれでフレッシュな感じがしていいが、一方では東証1部の売買代金が15営業日連続で2兆円を割り込むような薄商いが続き、「9月になれば主力銘柄のトレードが復活してくれるのか?」と、淡い期待も語られていた。

 今週は月が変わって9月になる。1日のレイバー・デーの休日が終わればお休みモードに区切りをつけて東京市場におなじみの「鬼」たちが戻ってくるのだろうか? もし帰ってくれば、中国のPMI、オーストラリアの経済指標、ADP雇用レポート、ECBや日銀など各国中央銀行の会合ラッシュに地政学的リスクと〃金棒の振りがいがある出来事候補〃多数。為替のドル円が104円台に乗りそうで乗り切れない微妙な動きをしているのも、〃ボラティリティ命〃の鬼たちにはおいしい現象だろう。鬼のおかげで先物主導で日経平均が大きく振らされても、市場関係者はかわいさ百倍で「9月になって売買が増えて結構」と、目を細めて喜ぶのだろうか?

 さて、8月の毎日の日中値幅を振り返ってみると、100円未満の日は1~3週(15日まで)は11日中3日で出現率は3割を切っていたが、4~5週(18日以降)は10日中8日で出現率が8割に急上昇していた。8月前半は決算発表時期にかかっていたとはいえ、8月後半のボラティリティの少なさは尋常ではなく、最近のドル円レートも顔負け。売買代金の15営業日連続2兆円割れとも重なる。この〃病気〃が9月に入れば治ると仮定すると、今週の上値、下値はどうなるだろうか?

 8月29日の日経平均終値15424.59円のテクニカル・ポジションを確認すると、25日移動平均線15397円から27円上にある。前週はこの25日線を割り込んでもその日のザラ場中に必ずそれを取り戻して底堅かったが、今週は「鬼」が戻ってくるのでそうは問屋が卸さないと仮定すると、次の防衛線として考えられるのが日足一目均衡表の「雲」の上限のクッションで15273円。雲はこんな水準までモクモクわき上がってきた。8月後半は雲に一度もタッチしなかったので、終値ベースではこのへんで底を打てるとみる。ちなみに15158円の75日移動平均線も15030円の200日移動平均線も、546円も幅があるぶ厚い雲の中にある。

 一方、上値のほうは、8月29日の終値は「買われすぎでも売られすぎでもないニュートラルな水準」なので、為替要因とか安倍改造内閣の政策とか、今回も「現状の政策維持」が鉄板と思われる日銀会合のサプライズか何かで「鬼」に先物を買われた時に上値追いができる余裕はありそうだ。25日移動平均線乖離率は0.17%しかなく、騰落レシオは100.0ジャスト、ストキャスティクスは50.83(9日Fast)、12日サイコロジカルラインは8日だった。

 上昇する場合、86円上の5日移動平均線の15510円は難なく突破できそうだが、5日にあるアメリカの雇用統計発表待ちという様子見要素があるため、上昇しても「25日移動平均+1σ(第1標準偏差)」の15597円あたりが限界ではないかとみる。内外の諸要因が好転しても7月末の戻り高値(終値15646円、ザラ場15759円)のクリアは、雇用統計が出た後の来週以降にお預けになりそうだ。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは15273~15600円とみる。なお、3日に予定されている内閣改造後の新閣僚の記者会見の際の質疑応答には要注意。過去にはその時の閣僚の発言が株価の上昇要因になったことも、下落要因になったこともある。もっとも最近は、「鬼」になって政治家にスリル満点な突っ込み質問をする記者は見かけなくなったが……。(編集担当:寺尾淳)