対ロシア包囲網へのプーチン大統領の対抗策は

2014年09月14日 09:55

画・対ロシア包囲網へのプーチン大統領の対抗策は?

ロシアの東シベリアおよび極東地域から、中国に天然ガスを供給するパイプラインの建設が1日、ロシア東部のサハ共和国で始まった。中国市場を開拓することは、現在EUが行っている経済制裁の効果を減少させると同時に、米国による「シェールガス革命」による経済的圧力の緩和も期待できる。

 ロシアの東シベリアおよび極東地域から、中国に天然ガスを供給するパイプラインの建設が1日、ロシア東部のサハ共和国で始まった。プーチン大統領はこの日、サハ共和国の中心都市ヤクーツク郊外で行われた天然ガス・パイプラインの起工式に出席し、「世界で最大の建設事業が始まる」と同事業の規模と経済波及効果に自信を見せた。このパイプラインが完成すれば、ロシアは天然ガスを欧州方面のみではなく、天然ガスの潜在的な大市場である中国へも輸出できるようになる。中国市場を開拓することは、現在欧州連合(EU)が行っている経済制裁の効果を減少させると同時に、米国による「シェールガス革命」による経済的圧力の緩和も期待できる。
 
 ロシアから中国に天然ガスを供給する事業に関しては今年5月に合意がなされた。2020年までには供給を開始し、以降30年間にわたって年380億立方メートル、総額4千億ドルの天然ガスを中国に供給する計画となっている。この供給量は現在ロシアがドイツに供給している天然ガスの量に相当する。また、同計画においては、販売価格についても単純計算で1千立法メートル当たり約350ドルとしており、これは欧州市場での販売価格に等しくなるため、ロシアにとって、経済面での戦略的優位性を高める可能性がある。

 ただし、このパイプライン事業のみを持って、対ロシア包囲網の完全なる打開に繋がる見込みは少ない。先にEUは対ロシア経済制裁強化を発表したが、欧米による対ロシア包囲網は、経済のみに留まらず、軍事面に拡大する可能性がある。というのも、奇しくもロシアのパイプライン起工と同じ日となる1日に、北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン事務総長が、記者会見において「私の理解では、今のウクライナ政府は10月26日の議会選挙を経て新しい議会によって非同盟という法的な立場を変更することを見込んでいる」と発言したのだ。これは、ウクライナのポロシェンコ大統領が今後NATO首脳会議に出席した際、支援を訴える予定であることを踏まえたもので、ウクライナのNATO加盟を示唆するものでもある。

 ウクライナがNATOに加盟すれば、集団防衛の対象になり、現在ロシアが行っているような軍事的行動は安易に切ることができないカードとなる。もしもロシアがNATO加盟国に対し明らかな軍事行動をとった場合、NATO諸国、つまり欧米との全面的対立の引き金になりかねないからだ。つまりウクライナのNATO加盟は、プーチン大統領が狙うクリミアの実効支配を断念せざるを得ない状況にも陥らせかねないほどの影響を与えるものだ。もちろんウクライナのNATO加盟は未定であり、すぐに実現するものでもない。今後も、ロシア対欧米の対立は続くであることが予測されるが、今しばらくの間は、互いの対抗策によって緊張状態の均衡が保たれることになりそうだ。(編集担当:久保田雄城)